私の知らないあなた(18)
私には刺激が強いから優斗が落ち着くまで病院には来ない方がいいと言われた。
刺激が強いとはどういうことだと聞くと、優斗の父親が言いにくそうに閉鎖病棟の個室にいる優斗は激しく暴れるのでベッドにくくりつけられていると言う。
横でそれを聞いていた優斗の母親がわっと泣き出した。
「雫さん、優斗とは別れて下さい。もうあなたは充分優斗に尽くしてくれました。今までありがとう雫さん」
私の両親も同じだった。
統合失調症が発症しても半分くらいの人はちゃんと社会復帰でき、七割から八割の人は普通に日常生活が送れるようになると言う。
優斗の状態は芳しくなかった。
社会復帰できる可能性はあるが、それには長い時間が必要なようだった。
「今は辛いかも知れないけど、きっとそのうちまた素敵な人が現れて幸せになれるから。絶対に今の決断を後悔しない時がくるから」
私の周りの人たちはみんなそう言った。
そうなのだろうか?
私ももう何がなんだか分からなくなってきていた。
みんながそう言うのならそうなのかも知れない。
年が明けてから優斗の部屋に置いてあった自分の荷物を取りに行った。
優斗の両親が着替えを取りに訪れているようで部屋は綺麗に片付けられていた。
そして私はなにげに開けた机の引き出しの中に飲まれていない大量の薬と一冊の大学ノートを見つけた。
優斗の日記だった。
震える指でページをめくる。
ノートを抱きしめむせび泣いた。
そこには優斗の不安と絶望と哀しみが、これでもかというほど書き記されていた。
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