私の知らないあなた(9)
統合失調症
優斗に与えられた病名。
男女共に若い頃に発症することが多く、男性では十八歳がピークらしい。
百人に一人はいるという原因がまだよく分かっていない精神疾患の一つで、昔は分裂症と呼ばれていた。
幻聴や幻覚、被害妄想などが特徴的で早期発見が大切と言われている。
早い段階から適切な薬を飲めば症状を抑えることができるが、再発のしやすい病気で数十年に渡り患者は病気とつき合っていくことになる。
そして統合失調症の一割が自殺で亡くなる。
パソコンの前からしばらく動けなかった。
まさか優斗が、私の優斗がこんな病気になるなんてと信じられなかった。
不安で胸が押しつぶされそうになる。
カウンセラーからすぐに優斗の両親に連絡がいき、そこから私の両親にも優斗の病気のことが知らせされた。
「優斗くんとの結婚はあきらめなさい、別れなさい」
当たり前だが父はそう言った。
「どうか別れてやって下さい」
優斗の両親からも同じことを言われた。
何日間も部屋に閉じこもって泣いた。
統合失調症の人でも結婚している人もいる、だから私にもそのチャンスが欲しいと、両親に懇願した。
「雫に優斗くんをずっと支えていく強さがあるのか」
冷静にそう言う父は正しい。
私より二つ歳上の頭のいいしっかりとした優斗、自分より弱い者に優しい優斗、そんな優斗に私は守られ生きていくはずだった。
そんな私が経済的にも精神的にも優斗を支えながら生きていけるはずがなかった。
「でも優斗と別れたくないの、私には優斗しかいないの」
そう泣く私の頭を優しく撫でてくれる優斗は本当は病気のふりをしているのではないかと思うほど普通に見える。
「雫って名前どんな意味があるか知ってるかい?一滴のしずくでも長い年月を重ねれば岩をも砕くことができる強さを持っているっていう意味なんだよ。僕は雫はそうだと思う。弱そうに見えるけど本当の雫はとても強い女性だ。でもその強さは僕ではなく雫自身のこれからの人生に使うべきだよ」
私は床につっぷして泣きじゃくった。
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