第9話




 屋上にはどうせ入れないだろうと踏んでいたのだが、予想に反して屋上は解放されており、奴らに追いついた時には、俺は屋上のど真ん中に立っていた。

 生温い夜風に、星の見えない夜空。

「ったく。屋上には鍵ぐらいかけとけ、ボケ」

「いやこれ僕のマンションだから。鍵とかかけないよ」

 ナイフを投げる。コート男の足に向かって。

 男はそれを難なく避けると、制服女に「離れてて」と言った。どうやら一騎打ちをお望みのようだ。

「いい度胸だ、モルモット野郎」

 満面に笑みが浮かぶのを止められない。

 次のナイフを構えた、その時だった。




「ご苦労ご苦労。お前は出来損ないなりに、うまくやったよ」





 忘れもしないその声に、たちまちぞっと血の気が引いた。

 手が無意識に拳銃に伸び、振り返ると同時に構え、引き金を引いていた。

 けれど、それはあまりにも遅すぎた。


。悪く思うなよ、コウ」


 パァン。


 景気のいい発砲音が、夜の街に響き渡る。




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