第6話



「着いた。ここだ」


 コートの上から刺されまくり、背中がいい加減チクチクと痛む頃合いになって、ようやくターゲットのいるマンションに着いた。小学校の近くの10階建。流血沙汰にはあまりいい立地とは言えないが、そんなことを言っていたら仕事が始まらない。

「ちょっと、本当に秘密教えてくれないつもり?」

「あとでちゃんと教えるから」

「……」

 ようやく落ち着いてくれたか、と安堵していたら、手の中に冷たい感触を覚えた。見ると、そこには小型の拳銃があった。

「なにこれ」

「もしもの時のため」

 ユキは真剣にそう言った。

「なんだよ。同業をやるからって、ビビってんの」

「あいつの写真を見た時ね、」ユキはいつもより少し早口だった。

「なんでか、。こいつ、一度刺したくらいじゃ死なないんじゃないか、って」

「えらく弱気じゃん。どうしたの」

「嫌な予感がするだけ」

「舐められたもんだ」

 ユキの頭にポンと手を乗せた。

「わかった。今回お前、休んどけ」

「は?」

「そんな弱気な奴に、俺様の背中は任せられん」

 ここで待ってな。

 銃をポケットにしまい、振り返ってマンションの方へと歩くと、後ろからユキに足をかけられ、転んだ。

「痛いな!」

「痛くない」

「とんだスパルタだ」

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