第4話
ほどなくメールで送られてきたファイルには、二人ぶんの顔写真と略歴が入っていた。一人は白人系の男で、もう一人はまだ中学生かそこらに見える、日本人の女の子だった。
「あ、こいつ、見たことある」
ユキが白人系の男の写真を指さして言った。
「こいつ、確か、同業だよ。殺し屋だよ」
「へえ。強い?」
「強いよ。でも、なんか変でさ、たまに別人みたいになるんだよ」
「ふーん?」
まあこんな職業だ。少しくらいトんでいてもおかしくはない。
「会ったことあるのか」
「うん。大勢でやった仕事だから、直接は話さなかったけど、いい人そうだったよ」
「へえ」
ねえ、とユキが詰め寄ってくるので、なに、と思わずのけぞった。
「さっきの電話、いやに長かったけど、なんの話してたの?」
「は? いや別に。大した話はしてないよ」
「秘密がどうとか、エロがどうとか、いかがわしい話してたんでしょ」
「してないって」
「コウには秘密が多いよね」
ユキはむすっと頬を膨らませる。
「昔の話もしてくれないし」
「お前だってしないだろ。お互い様だ」
「私が話したら、コウも話してくれる?」
「そりゃ、まあ……」
いきなりどうしたのだろうと不思議に思いながらも、勢いに気押されるように俺は小さく頷いた。
ユキがこんなに詰め寄ってくることはあまりない。俺の過去になど興味がないものと思っていたのだが、どうやらそうでもなかったらしい。ただの気まぐれかもしれないけれど。
ともかくユキは、ビシッとこちらに指を向けた。
「じゃあ、移動しながら喋ったげる。そうしたら、絶対コウも昔の話をするんだよ」
「それはわかったけど……人に指を向けるんじゃありません」
一応言ってはみたが、案の定、そのままふにふにと頬を突かれる。
「えーい」
「や、やめなさい」
「このこの」
「やめなさいってば」
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