第29話.暇つぶし
>井上くんって1号棟?
>そうだよ
>お家に誰かいる?
>いないよ
マメじゃないと言いつつもなんだかんだで会話が続いてる。まあ今日は暇だし、相手してやってもいい。
>今日から夏休みなんだよね? 予定は?
>ないよ
>ごめん
>なんで謝るの?
>私ばっかり質問してごめん
別に気にしてないんだけどな。やっぱりちょっとどこか不安定に感じる。まあ普通に学校に来てない時点でそういう予感はしてたから今更どうってことない。
僕からも質問を投げかけるべきだろうか、こういう時どうすればいいのか分からない。
>佐和田さんいつもなにして過ごしてるの?
いわゆる不登校の人間が、普段どうやって時間を潰してるのか単純に気になる。もしかしたら今後の暇つぶしの参考になるかもしれない。
>息してる
違う、そうじゃない。
小学生レベルの返答にイラッとした。バカなのか、ああきっとバカなんだろう。残念ながら、僕に冗談は通じないんだ。
>井上くんはなにして過ごすの?
>学校
>今は学校休みなんでしょ?
>佐和田さんが言ったら答えるよ
僕の質問には答えないくせに自分だけ聞こうなんてそんなことはさせない。都合が良すぎるだろう。
>じゃあ、LINEもあれだし今からうち来る?
なんでそうなるんだよ。僕はスニーカーを履いた。
「ごめんください」
「あはは、早かったね」
二度目のドアを開けて佐和田家に上り込む。やることもなかったし、ちょうどいい暇つぶしだ。
「あ、それ」
佐和田さんが僕のスマホのストラップを指す。いつも見ている実況者の人が紹介していた、やったこともないゲームのストラップ。
「井上くん、そのゲーム好きなの?」
「いや、別に」
「そっかぁ、残念」
口ぶりからして、佐和田さんはこのゲームをやっているんだろう。
「あげようか?」
「え、いいの?」 嬉しそうに顔を綻ばせた。このストラップも、よりゲームを知っている人に貰われた方が幸せだろう。
「嬉しい~、好きな実況者さんが紹介してたんだよねー、これ」
うんうん、好きな実況者が紹介・・・・して・・・・?
なんだか、どこかで聞いたことあるような動機だなあ。「もしかして」 その人のチャンネルを開き佐和田さんに画面を見せる。「この人?」
「あ!そうそう!この人!もしかして井上くんもリスナーなの?」
「まあ、暇つぶしに見るくらい」
「嬉しい~、この人すっごい好きなの!暇さえあればこの人の動画ばかり見てる!」
「そ、そう」
暇つぶしの仕方は分かったが僕と同じじゃないか・・・・。参考にはならないな。
「今日暇なら少し遊ぶ?」
「遊ぶってなにして?」
「お喋り!」
まあ、どうせ暇だし、今日だけは付き合ってあげてもいい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます