#5 コラム:ロリータコンプレックスの定義【ペドフィリア】
5歳までに興奮するのがベビーコンプレックス、7歳までがハイジコンプレックスで12歳までがアリスコンプレックス、15歳までがロリータコンプレックス。
一時、ネット上で人口に膾炙したロリコンの定義なるものです。もちろんここに登場する定義なるものは、心理学的に言えばでたらめなのですが、そもそもロリータコンプレックスって何なのでしょうか。ゆうきゆう・ソウの漫画『マンガで分かる心療内科』でも取り上げられていましたが、ふわっとしていてわかりにくいです。
実のところ、ロリータコンプレックスという言葉も精神医学の世界では使われません。正確には「ペドフィリア」といい、精神医学における国際的な診断基準を定めたDSMでは以下のように定義されています。ちょっと長いですが引用しましょう。
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A. 少なくとも6か月間にわたり、思春期前の子供または複数の子供(通常13歳以下)との性行為に関する強烈な性的に興奮する空想、性的衝動、または行動が反復する。
B. これらの性的騒動を実際に行動に移したことがある、またはその性的衝動や空想のために著しい苦痛、または対人関係上の困難を引き起こしている。
C. その人は少なくとも16歳で、基準Aに該当する子供よりも少なくとも5歳は年長である。
注:青年期後期の人が12~13歳の子供と性的関係を持っている場合は含めないこと。
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つまり一定期間以上、13歳以下の子供との性行為や空想が続く場合はペドフィリアと診断される場合が高いということです。診断基準に診断される側の年齢制限があるのは、若い人がたまたま好きになった相手がちょっと離れた年下だったというケースを除くためでしょう。病的なのはあくまで大人が子どもに性欲を抱くというパターンなので。
ペドフィリアに対する誤解として多いのが、大人の女性にも興奮するから該当しないというものです。よくマスコミが犯罪者をロリコンと報道する文脈で(もちろんその安直な報道は問題ですが)、犯人の部屋から大人の女性を対象にしたポルノなどが見つかったことを根拠にその人はロリコンじゃないという反論がなされる場合があります。実際にはペドフィリアの中にも子どもにのみ性的衝動を覚える「専従型」と大人にも欲情する「非専従型」の両方があるので、仮に大人に興奮していることを示す証拠があったとしてもペドフィリアじゃないとはそれだけでは言えません。
それともちろん、13歳以上ならセーフというのはあくまで診断基準あるいは刑法の強制性交としての話であり、倫理的な問題はまた別の話です。各都道府県や市区町村にはたいてい「青少年健全育成条例」の類があり、13歳以上でも18歳以下との性行為は罰せられる可能性があります。条例への賛否はありますが、性犯罪のパターンとして大人が子どもへ権力をふるうことで加害するというものがある以上、そこに対する防衛は必要でしょう。
ちなみに、ロリコンもといペドフィリアが犯罪者予備軍なのかというありがちな議論の結論は判然としません。診断の定義上ペドフィリアはその欲望を実行に移せば間違いなく処罰されるわけですし、13歳以下との性行為はもうほとんどイコールでペドフィリアということになれば、行動に移ったペドフィリア=犯罪者の図式は成り立ちますが、しかし子供に手を出すものが必ずペドフィリアというわけでもなく、行為にも至らず診断もつかない潜在的なペドフィリアがどの程度存在しているかわからない以上その点を検討することは不可能でしょう。
【要約】
病理的には、対象が13歳未満であればペドフィリア。もっともそれ以上だったとしても子供との淫行は手が後ろに回ることになる。
【元ネタ】
マンガで分かる心療内科:ゆうきゆうとソウによる解説漫画。
【参考文献】
American Psychiatric Association (編) (2014). DSM-5精神疾患の分類と診断の手引 医学書院
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