第4話:ソウルキャリバー
俺が投げたサイコロがパカっと開いた直後、猛烈な輝きが酒場全体を覆い尽くした。徐々に僕の視力が回復していくとビル&ルータスの姿はなく代わりに鎧を装備した少年が立っていた。
フワフワと浮遊していたパルカが楽し気な表情を見せる。
『バッチリ成功したね! 2人共合体した気分はどうかな?』
成功? 何のことだ?(成功? 何のことかな?)
あれ!?!? (あれ!?!?)
思念が2つあるんだが…………。
(そうだね…………。)
……………この喋り方は………もしかして………ディスティアなのか?
(もしかして…………レジス?)
うそぉぉぉぉ!?!? (うそぉぉぉぉ!?!?)
何でお前の思考が俺の中に伝達されているんだ!?!?
(それはこっちの台詞だよ!!)
まさか!!(もしかして!!)
合体してるのか!?(合体してるの!?)
『とても最高の気分です。』
眼前にいた赤髪の少年がパルカの質問に返答する。
『ディスティア&レジスチームの合体した気分はどうだい?』
『とても混乱しているよ。僕の思念が2つあってごちゃごちゃになりそうだよ。ビルとルータスは何でそんなに平然としていられるんだい?』
鎧の少年は肩を回し屈伸をするなどの軽い柔軟体操を行いながら語りだした。
『私は何度か経験があるから慣れているんだよ。確か君達はルーキーだったね。』
『うん……。』
『"超絶合体グラトニー"はルーキーからすれば部が悪い試合になるね。パルカさん、解説よろしくお願いします!』
『ほいキターー!! ええ、ビル&ルータスチームvsディスティア&レジスチームがとり行う"超絶合体グラトニー"の解説と実況を務めさせていただきます、パルカと申します。宜しくお願いします!!』
周囲の観戦客がパチパチと拍手を行い、パルカは別途のテーブル席に腰掛けマイクに類似した棒状の物を持ち解説を始めた。
『早速ですが"超絶合体グラトニーについて解説していきたいと思います。噛み砕いて説明すると"超絶合体"とは主人と僕が合体すること。先程ビル&ルータスチームが話していた"ルーキーからすれば部が悪い"とは信頼関係がまだ浅いディスティア&レジスチームにとって葛藤があることを意味するんだ。続いては"グラトニー"について説明するね。"グラトニー"とは暴食つまり食べ物競争のこと。この酒場のマスターによって作られるパルムを1時間只ひたすら食べまくり、多く完食したチームが勝利とする。以上、パルカによる"超絶合体グラトニー"の解説でした。』
再び周囲の観戦客によって拍手と歓呼が降雨する。
あれれ?? パルカさん……。俺の記憶が正しければ "生活自体は普通にできるから"って転生する前に言ってたよね……。運命のダイスのくじ運を悪くする、これって支障アリアリだよね……。
(その生活自体に運命のダイスは入ってなかったみたいだね!!)
はぁ……。俺は何処まで不幸なんだ………。
(まぁまぁ落ち着いて、レジス。まだ勝負に負けた訳じゃないよ。頑張ろう!!)
ああ…そうだな!!
『ビル&ルータスチームとディスティア&レジスチームと一々呼んでいたら長くなるからビル&ルータスチームをビルス、ディスティア&レジスチームをデジスと改名するね。解説ばかりでは観戦客も飽きてきたみたいだし両チーム共、広いスペースに用意された大きなテーブル席に腰掛けて準備を始めよう!!』
僕とビルスはパルカの指示に従い巨大なテーブル席に横並びで座ることにした。厨房にいたマスターによって作られたパルムが卓上に並べられていった。
『さぁ!! 両者の準備と料理の準備が整った!!これからビルスvsデジスによる"超絶合体グラトニー"を開始する。』
酒場内に立ち込めていた賑やかさが静寂に変わる。
そして、ついにパルカによって戦いの火蓋が切って落とされた!!!!
『!!!!試合開始!!!!』
開始の合図と同時に卓上から映像上の掛け時計が浮かび上がり時を刻む……。
僕は眼下に置かれていたパルムをガツガツ喰らい尽くし、ゴクンと飲み込んだ。
『 早速両選手に動きが見られました!!!! デジス選手は只ひたすらに王道な手法で食べ進める!!!! それに対してビルス選手は……。な、な、な、何と!! 自身の"ディスティーノ"(固有能力)でパルムを凍結させ、それを厨房にあった全自動スライスルブル機で粉々にしている!!!! そして、あろうことか軽々と完食してしまった!!!!』
おいおい……あんなのありなのかよ…………。作業手順はかかるが圧倒的に食べやすそうに見えるんだが……………。
(あっちのパルムはシャーベット状。胃のスペースを満遍なく押し込めて消化のスピードも速いよ。)
それに比べてこっちのパルムは固体。胃のスペースもしっかり押し込めないし消化のスピードも遅い!!
これはマズイな!!(これはマズイよ!!)
『フフフ……。デジスさんの初戦敗北記念に私の固有能力つまりディスティーノをお教えしましょう。私の"ディスティーノ"(固有能力)はフローゼンアワードといい対象物を凍結させることが出来ます。戦闘にも併用可能で水分などがあれば自在に形状も変化させることが出来ます。おっとお喋りが過ぎましたね。食事を再開させてもらいます。』
『なんだよそれ………。』
僕がどんなに頑張って食べても10分、20分が経過するにつれてどんどん差が広がっていった。丁度25分が経過した頃にビルスから話を持ち出された。
『諦めたまえ。君たちにとって無駄なあがきだ!!』
『まだ分からない!!!!もしかしたら"ディスティーノ"(固有能力)が使え……………。』
『否! 否! 否! 否! 否!!!!!!!!!』
『!?!?!?!?!?』
『もう善人ぶるのはやめだ!!!!!! お前如きじゃ俺には勝てねぇーんだよ!! とっとと諦めやがれクズが!!』
『なんだと!!!!』
『たかが1敗!!!! 所詮は1敗!!!! なぁ俺も勝敗が見えてる勝負を最後までやりたかねーんだ!!
さっさと諦めやがれ!!!!』
『うぅ………。』
やっぱり俺はこの世界でも………。
(違う!!!!)
ビルスはドン!! とテーブルを叩く!!
『1勝を貰い受けることで今回は特別に資金だけは見逃してやる!! さっさと降参しろ!!!!』
ディスティア、降参し………。
(ダメ!!!!!!!!)
ビルスが僕に向かって指差してきた!!
『半年だ!!』
『!?!?』
手帳らしきものを取り出すと抑揚のない声で悠揚に語りだした。
『第2条1項の規定によって"能力発動は信頼を有する"、第2条2項の規定によって"能力所持権は僕に有する"、第2条3項の規定によって"能力行使権は主人に有する"これらを全て満たすことでようやく使用可能になる!! ディスティーノを会得するには最低でも半年はかかんだよ!!!! お前に望みない!!!! 』
『なんなん………。』
『!!!!!!諦めろ!!!!!!』
そんなの……今の俺たちの段階じゃ……できな…。
(きっと出来る!! )
綺麗ごとだ!! 出来る訳がないじゃないか!!
(絶対に出来る!!私は絶対に諦めないから!!)
もうこの勝負を諦めて降参しよう、ディスティア!!
( 負けることがなによ!!!!)
今の俺たちのレベルじゃ到底敵わない。無謀過ぎる。
(バカ!! 何弱気になってるのよ、レジス!! ここで逃げていつ戦うのよ!!!!)
時には逃げる必要もあるだろ。戦略的撤退だ。分かって欲しい。
(何が戦略的撤退よ!! 最後まで戦ってみて負けるのはいい!! でも途中で逃げて負けるのは絶対ダメ!)
それじゃ!! 何か勝てる策でもあるのかよ!!!!!!!!
(それは…………。)
ほら、ないじゃないか!! 作戦も考えないで何が絶対に出来る!! 諦めないから!! なんだよ!!!
(レジスは自分を弱者と思い込み過ぎだよ!! )
俺は弱者だ。どんだけ努力しても報われなかった。どんだけ友達を作ろうとしても…………。
(私がいる!!!!!!!!!!!!!!)
!!!!!!!!!!
(私は知ってる!! 生まれつきの不運に苛まれたレジスがどれ程努力をしてきたかどれ程、苛められようが友達を作ろうと努力した強さを知ってる!!!!)
!!!!!!!!!!
(記憶が蘇る恐怖と戦いながら生きてきた強さを知ってる!!!!)
!!!!!!!!!!
(どんな時でも笑顔を忘れなかった強さを知ってる!!!!!)
!!!!!!!!!!
(私は知ってる、知ってる、知ってる、知ってる、知ってる、知ってる、ぜーーーんぶ知ってる!!!!)
!!!!!!!!!!
(もう1人で戦わなくていいんだよ。私も側にいる……。君は1人じゃないんだ……………。)
ディスティア、もしかして俺の……………。
ありがとう、ディスティア。お陰で俺が忘れていたものを少し取り戻せた気がするよ………。
ありがとう……………。
カチカチと時を刻み長針が6を指し示す。
『残り時間が30分を切ってしまった!!!! 果たしてこのままビルス選手の一方的な展開で終わってしまうのかぁぁ!!!! ど、ど、ど、どうしたことか!!!! デジス選手が先程とは打って変わって雰囲気が変わっている!!!! 黒い煙? いや、闇のオーラがその身を包み込んでいるぞ!!!!』
これが"ディスティーノ"(固有能力)。
(使用したこともないのに使い方が手に取るように把握できる!!)
『まさか、この短期間で習得したとでも言うつもりか!!!! デジス!!!!』
今までの堂々としたビルスの面構えが血相を一変させた。
『そのまさかです。色々僕の中で苦労しましたがようやく会得出来ました。』
『クソ……!!だが、会得したからといって勝利できると決まった訳ではないぞ!!この30分の差はそう簡単に埋めることは不可能だ!!!!』
僕は全身を取り巻く闇のオーラを張り巡らせながら手に集中させた。すると、闇の火の玉が掌に作り出され軽く息を吹き込むと猛スピードでビルスの身体へ飛ばされていった。食事に集中していたビルスは気付かず接触し全身が黒いオーラに包まれる。それと同時にビルスの方向から猛スピードで光の火の玉が飛んできて僕の身体全身に取り巻いた。闇のオーラと光のオーラが混合し、まるで陰陽太極図を表しているかのようだった。
『これわぁぁぁ!!!! デジス選手によるディスティーノの影響でビルス選手が闇のオーラに包まれたってビルス選手!! ビルス選手!! ビルスせんしゅうぅぅぅううう!!!!』
『力が入らない、それにとてつもなく眠気がする。クソ頭が……………。』
必死に苦面の目顔で抵抗を図るがうつ伏せになり眠ってしまう。
『なんと!! ビルス選手が試合中に眠ってしまったぁぁぁ!!!! しかし、ビルス選手が食したストックがありますので試合は続行されます!!!!』
なぁディスティアこれってもしかして……。
(相手を堕落させ能力を略奪する能力。略奪とはいってもコピーするだけ…)
この感覚から察するに相手の能力をストック出来るのは2つまででそれ以降は入れ替える感じだな……。
(霊魂と精神の口径……名付けて"ソウルキャリバー")
ソウルキャリバーか…………気に入った!!!!
(うん!!)
僕は残り30分間フローゼンアワードを使用し食事に集中した。そして、ついにビルスが完食していた数を追い越し見事逆転することに成功した。
そして長針が12を指し示した!!
『!!!!!試合終了!!!!!』
『50個対47個、僅差でデジス選手の勝利リリリリリリリィィィィィ!!!!でーーす!!!!!』
酒場中の眼光と称賛の春風が隅々にあたるまで注がれた!! とても心地良く風化しているように感じ思わず崩れ落ちてしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ご覧いただきありがとうございます^_^ ブクマや感想などよろしくお願いします^_^
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます