家に帰ったら、どっと疲れが押し寄せてきた。
実家なら、とっととお風呂に入りなさいとか言われるのだろうけど、一人暮らしだからそこらへんは気楽だった。
めんどくさい、着替えるのがめんどくさい。
着替えてお風呂に入って髪の毛乾かして………うう、考えただけでもっと疲れる。
鈴木くん、私に気があるのかなあ。
ありそうだったけど。
うぬぼれ?
まあ、鈴木くんが"私"を好きではないのは今日で確信した。
「小川さんてクールだよな、」
とか、
「一人暮らししてんだ?寂しくねーの?」
とか、
「なんかあったらさ、俺に言ってよ」
とか言われたから。
なんかあったらって、何。って感じ。
やはり鈴木くんは、私の闇(これは大袈裟な表現だけど)に惹かれて私を救いたいとか思っちゃってるだけだ。
あー、あとで連絡するってなんだろ。
めんどくさいなあ。
ぽふっとベッドにダイブして
浴衣のまま、うつ伏せになった。
わ、このまま本当に寝ちゃいそう。
それはまずい。
なんて思いながらも、いったんベッドに埋もれた体を起こすのは容易ではない。
まぶたが一気に重くなって、今にも寝てしまいそうだった。
ジジー、ジジー、ジジー。
スマホが振動した音が飛びかけていた意識を引き戻した。
電話、だ。
帰り際に鈴木くんに言われたことを思い出す。
連絡するって、電話でってことだったわけ?
……めんどくさ。
眠い目をこすりながらも仕方なくベッドから起き上がって、スマホを取った。
無視しても、またあとでかかってきたらそれはそれで面倒だから。
パスコードをほぼ無意識に入力して、よく画面を見る前に応答ボタンを押したと同時に、映し出されている発信源が目に入った。
鈴木啓太、ではなかった。
電流が流れたように体が固まって、頭が真っ白になった。
よく見ずに応答ボタンを押してしまったことを後悔しても遅かった。
電話の向こうで、息を吸う音がかすかに聞こえた。
あとで連絡する、と言った鈴木啓太を恨んだ。
あんなことさえ言われなければちゃんと発信源を見てから応答ボタンを押していただろうに。
「もしもし、」
なんの変哲もないたったの4音が、私の身体中の毛穴をぶわっと広げた。
私に電話をかけてきたのは、秋川尊だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます