自分でも驚くほど花火に集中できて、隣に鈴木くんがいることを忘れるほどだった。
約一時間の花火はあっという間に終わってしまって、人波にのまれて私たちも帰り出す。
「どうだった、花火」
「きれいだったね」
「なら、良かった」
鈴木くんはどうだったの、とは面倒くさくて聞かなかった。
「あのさ、」
「うん」
彼が、少し緊張したようにすっと呼吸をしたのを見て
嫌な予感がした。
こうなるであろうことは予想してはいたのだけれど。
「いま、小川さん、好きな人とかいるの」
やっぱり。
思わずため息をつきそうになって、慌ててこらえた。
考えてみれば、花火大会のお誘いをOKしてしまった時点で思わせ振りだったのかもしれない。
心のなかで反省した。
「さあ。」
いる、けれど。
もちろん、大好きな人がいるけれど。
声に出してそれを認める勇気はなかった。
「そうか。」
再び訪れる沈黙。
「てか、小川さんて恋愛とか興味あんの」
「さあ」
恋愛って、興味とかそういう問題ではないんじゃない、という言葉は控えた。
「ふうん」
時期尚早と感じたのか、私に興味が失せたのかそれ以上はなにも言ってこなかった。
黙って歩いていたら待ち合わせた場所まで程なくしてついて、解散になった。
「帰ったら、連絡する」
とか言われて、さよならをした。
連絡するって、何。
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