鈴木
『こんにちは。
勝手に追加しちゃいました。ごめん(><)
突然なんだけど、来週の○○町の花火大会、もし良ければ一緒に行きませんか?』
正直に言うと、がっかりした。
鈴木くんには申し訳ないけれど非常にがっかりした。
やっぱり、期待なんてするものではない。
鈴木 啓太。
ゼミが同じ、大学での同級生。
彼とメッセージのやり取りをするのはこれが初めてだ。
ゼミのグループラインから追加したらしい。
彼は、はっきり言って私の苦手なタイプだ。
前々から、私が大した返答もしないのに、彼はよく話しかけてきた。
私に気があるのでは、とも思うくらいに話しかけてきた。
どうやらそれは、大きな間違いではなかったらしい。
花火大会に異性を誘うだなんて、気があることがほぼ百パーセントだと言っても過言ではないだろうし。
彼は、"私という人間"に惹かれているのではない。
私が無意識に醸し出してしまっているであろう負のオーラに惹かれているだけだ。
なんとか私の悲しみとか苦しみを自分が取り除いてやりたいと思ってしまっているような人なのだ、きっと。
私はそんなことは微塵も望んでいないのに。
彼のような人はたくさんいる。
そういう人は、映画とかの見すぎだと思う。
よく恋愛映画でヒーローがヒロインを暗い過去から救ってあげるっていういわゆる感動系のストーリーがあるじゃない。
まさに、それ。
映画ではそれでいいかもしれないけれど、現実はそんなに簡単で単純ではないとわかっていない人がたくさんいる。彼のように。
彼は、私を救ってあげたいとか思っちゃってるだけ。
それを彼自身が自覚しているかは別だけれど。
彼が私を見る目を見ていれば自ずとわかる。
あの、同情するような目。
俺が助けてやるから、俺が受け入れるから、とでもいいたげなひどく優しい目。
ヒーローになりたい、または誰かを救うという英雄的行為をしたいだけなのだ、彼のような人は。
小説でも映画でもそんなものが溢れているではないか。
ヒーローまたはヒロインが闇を抱えていてどちらかがそれを融かすというようなものが。
大衆にそのようなストーリーが受けやすいのは個人が持つ誰かを救ってあげたい、誰かの希望だとか太陽になりたい、とかの欲求に沿ったものだからじゃないかと私は常々思う。
でもこんなことを考えながらも、これはチャンスかもしれないとも思う。
いや、決して鈴木くんとどうこうなるわけではない。彼とは絶対にどうこうなりたくない。
しかし、新しい世界を切り開くための第一歩にはなるかもしれないとは思うから。
だから私は、
『いいよ。』
承諾した。
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