大学は家から遠く離れていたから、一人暮らしをすることになった。


大学に入っても、ゆらゆらと抜け殻のような生活をしていた。

友達なんて、できるわけがなかった。

授業を受けて、仕方なくバイトをして、ただ家に帰るだけの日々。


それでも、心の奥底では彼に対する希望を捨てられない私。


前に進まなければいけないことなど誰に言われずとも理解している。

でもきっと、どうにか誰かと交際に漕ぎ着けたとしても、私は絶対に彼と比べてしまうし私にとって彼以上の人がいるだなんて想像できなかった。


彼はどのような毎日を送っているのだろう。

今はまだ、仕事に慣れるので精一杯といったところだろうか。

しかし、彼のことだから、すぐに仕事を覚えこなしてしまうに違いない。

彼とはそういう人なのだ。

どう考えても私とは釣り合わない。

私みたいな何もない人間とは釣り合うわけがない。

どうして彼が私を好きになったのかは、今でも不思議なことのひとつだ。

まあ、そんな理由など今となってはどうでもよかった。

もう彼が私を見ることなどないのだから。

彼が絶対に付き合わないであろう人ナンバーワンがおそらく私なのだから。


彼と付き合っていた頃の自分を羨み妬んで過去にとらわれ続ける毎日。

精神は削られるしメリットなど全くないのに過去を振り切ることができない。


もはや生きている意味などなかった。

それでも私が生きているのは、死ぬのが怖いという陳腐な理由がほんの少しと、彼がこの世界のどこかに生きているのだという理由が大部分になっていた。

彼がきっと今でもこの世界に生きているからこそ私は生きていられた。

彼が存在しているという事実、たったこれだけの事実が、私に毎日をなんとか生きる力を与えていた。

それほどに、私にとって彼というものはすべてだった。

絶対であった。

彼が私に振り向かなくても、私が彼を見ることさえ叶わなくとも、同じ世界に彼が存在しているということは私にとって非常に強力な効力を発揮していた。


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