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彼は結局、

三日後に目を覚ました。



学校の帰りに病院に通い続けて3日目。


3日、というのは

長かったようで短かった気がする。


もしこのまま意識が戻らなかったら、

と、

そのことばかり考えてしまって落ち着いていられなくて

まさに一日千秋というのがぴたりと当てはまるような日々だったけれど

終わってしまえば意外と短い、

そんな感じ。


その日、祈るようにして

彼の病室に入ると上半身を起こして窓の外を静かに見ている彼の姿があった。


安堵感とか、

嬉しさとかがこみ上げる前に、

涙が一筋つうっと零れた。


なんかもう、反射的に。


「尊くん!!」


思わず病院に似つかわしくない大きな声をあげて駆け寄った。



でも。


私の方をゆっくり振り向いた彼は

当惑しているような表情で、


「だれですか?」


眉をひそめながら、

静かに私に尋ねた。


その言葉が、

なんでもないただの言葉だという風に。


その、

私に向けた純粋な濁りのない目が

本当に私のことを知らないんだと

物語りながら。



心臓が、

凍ったような気がした。



「えっ、私だよ!


紗佳!

わたし、紗佳!!!


尊くん尊くん、

覚えて、ないの?

記憶、なくなっちゃったの?


そんなこと、

そんなこと、

ないよ、ね・・・?


私のこと、覚えてないの?


紗佳、さ や かっ・・・!

さやかだよ、っ、尊くんっ、


思い出してよぉっ、ねぇっ・・・!!!」


私が涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら

まくしたてると、

尊くんは一瞬

目を見開いて、


「紗佳、か。


ごめん、ちょっと記憶飛んじゃってた。

大丈夫、記憶喪失にはなってないから。


ごめんね。驚かせて。

ほらほら、泣かないで。」


にこりと言った彼のまなざしが

いつもと違うのは、

きっと、

気のせい


ではない。


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