6話:埋まるピース

 ぐるぐる、ぐるぐるぐる、ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるるるるるぐぐぐるぐぐるるるるぐぐぐぐるるるるるる……


 目が、視界が、脳が、回る、崩れる、落ちる、吸い込まれる、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い……


 まるで洗濯機の中に入れられたような、滝つぼに飲み込まれたような、ブラックホールに迷い込んだような、時空の歪みとも言える空間で、ただひたすらに掻き回される。脳が、内臓が、血管が、筋肉が、思考が……


 掻き回され、掻き回され、掻き回され、掻き回され、掻き回され、掻き回され……


 ーー落ちる


 真っ暗な無の空間に落とされ、次の瞬間闇が光に包まれる。


 その光には、これまでの生活が映っている。だが、それだけではない。


「ーー遡ってる?」


 映し出される生活は、自分のこれまでの行動を遡っている感じだ。

 その後生まれる直前まで遡り、プツリと映像が途切れる。


 そして、声が聞こえる。


『ーーゥ! まだか!?』


『ーーだ! まだかかる!』


『早くしねぇと、持たねぇぞ!』


『もうあと少しだ!』


『はやく!!』


 そしてまた、途切れる。

 そして、遡る。


『俺が、やる』


『馬鹿か! やめろ!』


『それは僕も、反対だね』


『好きにすればいい。が、勧めはしない』


 また、途切れる。

 また、作られる。


 途切れ、作られ、切られ、結ばれ、折られ、付けられ、外され、嵌められ、消えて、生まれる。


 次々に遡っていく。目まぐるしく、巻き戻っていく。


 次の瞬間、映像がピタリと止まる。


『君たちが、僕らに変わる新しい四天王だよ』


『我々を凌駕するその力、認めざるを得まい』


『オレが負けることなんて初めてだかんなぁ』


『私も、久しぶりに本気で負けましたからね』


『頼んだよ。リゥ、ゴウ、レイ、ゲン』


『『『『ーーは』』』』


 椅子に腰をかける四人と、床に片膝をつく四人。


 そしてその空間は光に飲み込まれる。


 ーータ、カタカタ、カタカタカタカタタカタカタタタカカタタカカタタカタカカカカカカタカタカタカタ……


 無数のピースがどんどん嵌る。喜びも、悲しさも、楽しさも、辛さも、嬉しさも、苦しさも。


 どんどんどんどん、嵌って、嵌められて、揃って、作られて、埋まっていく……


 天野龍翔に、上書きされる。


 最後のピースが嵌められた瞬間、天野龍翔は天野龍翔でなくなる。


 ーー全部、思い出した。

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