2話:待ち望んだ再会
「はろー!!!」
久々に会える喜びを露わにして、龍翔は思いっきり叫ぶ。その大きい声に練習をしていた皆の手が止まり、一斉に視線を浴びる。少しの沈黙があり、内心で「やらかしたかな?」という不安が頭を過ったが、それは直ぐに打ち砕かれた。
「ーー龍翔くん?」
その中の一人が龍翔の名前を呼ぶ。若干低身長な少年は、龍翔が去年一番仲良くしていた後輩、
その反応に安心して、龍翔は満面の笑みを浮かべ親指を立てる。
「やっぱり! 龍翔くんじゃん!!」
「まじ!? 久しぶりー!!」
「優也先輩も!」
「おー! 来たのー?」
晟の声に続き、他の後輩たちも次々に声を上げる。
さすがに後輩を大切にしていただけあって、龍翔への反応はいい反応ばかりだ。タメ語を許してる辺りで仲の良さも窺える。
「おーう! 来たぜー!!!」
その反応を受けて龍翔もさらにテンションを上げて部活の中に入り込む。自分とほぼ同じくらいの身長の後輩たちとハイタッチを交わし、その足で部活を見ていた顧問のところまで行く。
親しさも相まって、転校して嘗ての同級生と久しぶりに会ったような、そんな風にも見える風景に、優也は少し笑いながらゆっくりと後を追う。
「おお、天野に佐野! 来たのか! 久しぶりだな」
「っちわー! 母校訪問に来てたんで顔出しに来たんスよー!」
幸いにも顧問は変わっておらず、突然現れた龍翔と優也を笑顔で声をかける。龍翔の卓球の実力はそこまで強いという訳ではないが、後輩の面倒見が良く、他の誰よりも後輩の指導に徹していた。
対照的に優也は誰よりも卓球が好きで、誰よりも卓球に熱中し、今でも卓球を続けている。
そんな二人は顧問からの評価も高く、今回も突然の乱入も、場合によっては追い返されるであろう行為だが、快く歓迎してくれた。
それからすぐに練習も再開し、二人は二年生と一緒に楽しく打っていた。流石に一年も練習出来ていないと、相手が二つ下であってもかなり強く感じる。現役でもそこまで強くなかった龍翔ならば尚更だ。
その上、今の代は本当に強い。本気で試合をすれば、1セットも取れずにストレートで負ける可能性も大いにある。その点優也はさすが現役と言った感じにメキメキと上達していた。
ーーと、そんな皆の成長を感じながら楽しく練習をしていたのも束の間。この後練習場は一瞬で地獄絵図と化していく……
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