1話:母校訪問
「んんーっ、あぁー! 久しぶりに来たぜぇぇ!」
大きく腕を広げて伸びる青年の名は
ふぅ、と息を整えて服装を正し、教室に向かう。
「いやぁ、高校に入ってからおまえらも少し落ち着いたか? 雰囲気が少し大人になってきたな」
母校に来て龍翔らを迎えたのは去年の担任だ。
中学の頃の龍翔と優也は、お世辞にも真面目とは言えない生徒だった。大きな問題こそは起こしていないが、授業中はほとんど喋っていて、静かな時は大体寝ているか不機嫌な時だけだ。
「流石に高校の成績はそこそこ大事ですからね」
二人は目を合わせて笑う。元々勉強が嫌いな二人は高校は違うがどちらとも大学入試などするつもりは無い。それでも就職するには成績も大事になってくる。
「あの高校なら授業は大丈夫だと思うが、部活とかはどうだ? おまえらは前から部活を頑張ると成績が落ちるし、勉強を頑張ろうとすると部活の成績が落ちてただろ。両立出来てるか?」
少し真面目な担任の話に、龍翔は「意外と気にしてくれてるんだなぁ」と思いつつ、笑顔で答えた。
「俺が行ってる高校は宿題が少ないし、今のところは中学の復習とかがメインな授業も多いですから。なんで両立はできてると思いますよ」
「そうか! それなら良かったな」
龍翔の話を聞いて安心したのか、先生も声のトーンを上げて答える。
そのあとも少し話をして会話に区切りがつく。
「そうだ、久しぶりに部活に顔出してやったらどうだ? 特に天野は後輩と仲が良かっただろう。まぁ、三年は引退してるがな」
「そうっすね。久しぶりに顔見れたらいいなーと思ってたので。二年生にも仲良くしてた後輩はいますし。一年生も見てみたいですし」
そう、龍翔が来た目的は先生との話の他に部活に顔を出すという目的もあった。龍翔と優也が所属していたのは卓球部だ。龍翔の中ではそっちがメインと言っても過言ではない。
後輩とやる久しぶりの卓球を楽しみにしている龍翔のバッグの中には、シューズもラケットも、練習着さえも持ってきている。龍翔にとって卓球部での生活は中学校生活で一番の思い出だ。
「てか、龍翔にとってはそっちの方がメインだったんじゃねーの?」
笑いながら優也がツッコミを入れる。図星なので否定はしなかったが、目の前に先生もいるため素直に頷くこともしなかった。笑いながら誤魔化したが、まぁ先生には勘づかれていただろう。
「まぁ、もう話すこともあんまりないし、部活に行ってやりな。三年がいなくなって、二年だけじゃ回せないところもあるだろうしな」
「そッスね。ありがとうございまーす。さよならー!」
龍翔は分かりやすく声の調子を上げて挨拶をし、笑顔で部活に向かった。
優也も「さよなら」とお辞儀をして龍翔の後を追う。
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