前回までの俺たちの、色々などなどエトセトラ。


 俺は、見原礼人みはら あやと。身長185センチの中肉高背むだにでかいだけの高校1年生だ。


 2ヶ月ほど前、クラスメートの志戸鈴実しど すずみが突然やってきて宇宙人を助けて欲しいと言ってきた。

 一瞬誰か思い出せなかったくらい存在感の無い子で、身長も俺の胸の辺りに頭のてっぺんが来るようなちんちくりんだ。


 改めて見てみると生真面目な雰囲気だが、実際話を始めると少し抜けていた。動きは小動物感さえある。宇宙人を助けて欲しいなんて、かなりイタイ子なのかと正直引いた。


「あ、アヤトくん、ひ、ひど……」


 しかし、お姫様人形のような綺麗な宇宙人(手乗りサイズ)がいきなり現れて、志戸と一緒に深々と頭を下げるし、他の誰にも相談できないようだし……ということで、宇宙人ミーファの仲間を敵から護る手伝いをすることにした。


 意識体であるミーファは二体に分かれ、ミミとファーファとなると、それぞれが志戸と俺のそばに居ることになった。


『『おてすうを、おかけしております』』


 帰宅した俺は、宇宙人が家族に見つかると大変だとトイレに飛び込んだんだが、仲間が襲われてるってことでそのままトイレを秘密基地にされ、遠隔で戦いの指示を出す事になって……。


 その日から俺の生活は変わった。

 宇宙のどこかで、仲間を襲う気持ち悪い敵に対抗しているうちに、なんだか襲撃頻度が上がってくるわ、授業中やテスト中にも現れるようになるわ。

 ついに学校のトイレにも駆け込むはめになった。

 不測の事態にはフリーズして役に立たない志戸だが、テストの時のヤツはちょっとだけ見直したものだ。


「え。み、見直し!? ちょっとだけ!?」


 それから、声も姿も女の子っていうコンプレックスから声を上手く出せなくなった音成乙呼おとなりおとこ先輩(偽名)に出会って……じゃないな、トイレの壁越しで知り合った。

 なんやかんやで秘密の仲間に加わってくれたんだが、姿を見せたくないという。

 そんなわけで、トイレに籠もったままの先輩には今まで直接会ったことはないけど、読書好きでいろんなことを知っているので、すごくお世話になっている。


「そ、そそそそそそっれは……こ、ここここちらこそ、なのっで……」


 先輩が気味悪がっている音を調べるために夜の学校に潜入したところ、人目を忍んで米軍専用の航空燃料が搬入されたのを偶然見てしまう。

 一体なんだろう、この学校。

 そして――



「あにき! また便秘!? ほんっと冗談じゃないぞーーーーっ!!」

「父さん、今日も早めに出ないといけないから、先に使わせてくれないかな?」

「あーくん、おなかの調子悪いなら病院行きなさいよぉー」


 朝のトイレ戦争も相変わらずだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る