終わりの始まり
12月の始まりに、それは突然だった。
家に1本の電話がかかってきた。
ボクは何気なくその電話に出る。
そしてボクは呆然とするのだ。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
夕食の片付けを手伝ってくれていたエプロン姿の君が首をかしげる。
「もしかして、悪いこと……?」
君は心配そうに聞いてくる。
「いい事でもあるし……悪いことでも……」
ボクは正直に言うことにした。
嘘をついていても仕方の無いことだ。
「君の両親が、見つかったらしい」
君は「えっ……」という声を漏らし、嬉しいのか悲しいのか、わからないような表情をする。
そんな表情をされると、こっちまで辛くなってしまう。
「明日、迎えに来るって……」
「……」
君は何も言えずにその場にへたりこんだ。
きっと、記憶喪失のせいで何も覚えていないからだろう。
君からすれば、知らない人の家にまた居候するような感覚なのだから。
その日の夜は君が一緒に寝たいと言うので、同じベッドで眠った。
君のそばにいられる最後の夜だと思うと、涙が止まらなかった。
君はそれだけ、ボクにとって大きな存在になっていたということだろうか。
ボクはそのまま、君を抱きしめたまま泣き疲れて眠ってしまった。
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