サカナのカゾク
「お兄ちゃん、サカナが見てみたい!」
君が来てから5ヶ月、半年がたった頃、突然君がそう言った。
どうやら、水族館のことを放送していたテレビで生きている魚を見て、直接見に行きたくなったんだとか。
「死んでるのじゃなくて、生きてるのが見たい!」
あまりにも目をキラキラさせて言うもんだから、次の土曜日に行こうと約束した。
そして土曜日、ボクらは隣町の水族館に行った。
それほど大きな水族館では無いが、魚の種類としてはお寿司屋さんよりかは多いんじゃないだろうか。
君は初めて見る生きた魚に大興奮。
あっち見たりこっちみたりと忙しそうに走り回っていたのを覚えてる。
君はガラスにべったりと張り付いて、1番大きな水槽をのぞき込んだ。
その目の前を3びきの魚が泳ぐ。
「あれはお父さんとお母さんと、子供かな?」
ボクがそういうと君は「ん?」という顔をしてボクの方を見つめた。
「そういえば、お兄ちゃんに家族はいないの?」
ボクはすぐには答えられなかった。
果たして、君に正直に言うべきなのだろうか。
ボクの両親は死んだ……と。
「いるよ」
嘘じゃない。
「君はボクの家族だ」
ボクがそう言うと、君は少し照れながら、小さな声で「お兄ちゃんはカゾク」と呟いた。
そう、君はもうボクの家族だ。
大切な家族。
この時に既にボクは、君を手放したくないと強く願ってしまっていたのだろう。
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