無表情系女子が倒せない

プールから2週間ほどが経った頃。


少し、肌寒い日もでてきたか、というくらいの頃。

君が遊びたいと言ってきた。

何か家出できる簡単な遊びがしたいと言うので、オセロとトランプをすることにした。

「オセロのルールは知ってる?」と聞くと、彼女は「白黒のコインを互いに置きあって、ひっくり返し合い、最後に自分の色になっているものが多い方が勝ちのゲーム」と詳しい説明をしていた。

手に持っている説明書をチラ見していたことは見なかったことにしよう。

よく知ってたね、と褒めてあげると君は嬉しそうに笑った。

「じゃあ、しよっか」

「うん!」



結果はボクの勝ち。

2枚差の僅差きんさだった。

君は悔しそうに「もっかい!」と人差し指を立てて、その手を何度も見せてくる。

ボクが「いいよ」というと「やったぁ」と両手を上げて喜んだ。

最近は君の感情の表現が豊かになった気がする。

初めは無表情だったが、今となってはコロコロと表情を変えて、とても可愛らしい。


2戦目もボクの勝ち。

今度は大差での勝利だった。

君は「うぅ……」と言いながら悔しそうに唸っていた。


「じゃあ、今度はトランプをしよっか」

ボクがそう言うと君は、それなら勝てる気がする!というような表情で頷いた。

でもふと首を傾げて、「トランプってなに?」と言いたそうな顔をする。

まずは簡単なババ抜きでもしてみよう。

ボクは簡単にルールを説明した。

一応理解出来たようで、不安そうながらも頷いてくれた。

カードを配る。

2人だけなのでかなり多い。

ボクから交互にカードを取り合っていく。


結果はボクの負け。

ババ抜きというのは表情の変化を使って攻防するものだ。

でも、君はまるで初めてあった時のような無表情を貫いて、全く感情が読めなかった。

逆にボクの方は、かなり表情に出ているらしく、とても分かりやすかったらしい。

まあ、君が喜んでくれたから良しとしよう。


それから何度かトランプをしたが、ボクが勝つことは出来ないまま、晩ご飯の時間が近づいてきたのでゲームを中断することにした。

君が「お兄ちゃん、また遊ぼうね」と言うから、うんと頷いたものの、やっぱり彼女との別れが頭をぎってしまうのだ。

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