コーチと生徒(プール後半)
水に慣れてきた頃、君に泳ぎ方を教えて欲しいと言われた。
ボクがいいよと言うと、君は思いついたようにプールから飛び出し、ボクに向かって手をこまねく。
君について行ってみると、初めに水着を借りた店に着いた。
ここのプール、なかなか良心的で、1度水着を借りるとその日の内は何着でも着替えられるというシステムになっている。
「着替えたいの?」
ボクがそう聞くと君は小さくうなづいて、女性の定員さんに耳元で何かを囁いた。
店員さんはにこやかに頷いて、少々お待ちくださいといって君と一緒に更衣室に入っていった。
数分後、出てきた君の姿に驚いた。
君はスクール水着、いわゆるスク水と言うやつを着ていた。
しかも肩の紐のところに黄色い水泳帽も挟んである。
君は少し恥ずかしそうに、「泳ぎを教えてもらうなら、これだと思ったの」と言った。
ボクは頭をぽんぽんとしてあげながら、「似合ってるよ」と言ってあげた。
君は嬉しそうに笑って、「コーチ、お願いします」と言ってきたから、「任せなさい!」と笑いながら返した。
でも、君は本当に泳いだことがないようで、泳ごうとしても沈むばかり。
ボクはなるべくわかりやすいように、動きも入れながらゆっくりと教えてあげた。
手を握りながらバタ足の練習をしたり、息継ぎのタイミングを教えてあげたり、時々休憩を挟みながら2時間ほど練習した。
君の頑張りがあったからか、まだ長い距離は泳げないが、少しだけ泳げるようになった。
「よく頑張った」と頭を撫でてあげると、「コーチ、お兄ちゃんのおかげ」と言って、逆に頭を撫でられた。
君の撫でる手は、優しくて、とても温かかった。
最後に一通りのプールを回り、家に帰った。
久しぶりのプールはとても楽しかったが、君に「また来たいね」と言われた時、君の両親が見つかって、君が帰ってしまった時のことを考えてしまい、おぼつかない返事をしてしまったことを覚えている。
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