初めては怖いものだ (プール前半)

彼女が家に来てから4ヶ月がたった頃だっただろうか。


プールに行きたいという話になった。

どうやら、テレビを見ていたら、ここの近くで新しくオープンした大きな室内プールのことをやっていたらしい。

もう9月も終わり頃だと言うのに最近は暑いし、散歩以外の運動もやった方がいいだろうし。

そういう訳でボクらはプールに行くことになった。


翌日の日曜日、朝のニュースで今年の最高気温と放送されていた。

まさにプール日和だ。

押し入れの奥にあったしばらく使われていなかった浮き輪を2つ持ち、その他の準備もしっかりして家を出た。

水着はレンタルできるらしく、そうすることにした。


プールまでは電車で3駅、そこから徒歩で8分ほどのかなり近い場所にあった。

プールに着くと、入場チケットを買い、建物の中へ入った。

「広い……」

「思ってたよりも広いな」

室内プールと聞いていたが、予想以上の広さに呆然としてしまった。

それに、まだ早い時間だと言うのに人が沢山いる。

ボクは彼女と手を繋いだ。

「はぐれないようにしっかり握ってて」

彼女は少し照れながら、ボクの手をぎゅっと握り返してきた。


どうやら彼女はプールに来るのが初めてらしい。

記憶喪失なので分からないが、記憶の中では言ったことは無いらしく、とてもワクワクしているようだった。

楽しみではあるものの、お風呂と違ってプールは怖いらしく、ボクが浮き輪を膨らませる間にあそんでおいでといっても首を横に振って、一緒に行くといって聞かなかった。


いざ入るとなってからも、ギリギリ足のつかない深さが怖いらしく、浮き輪よりもボクにしがみついてきていたのを覚えている。

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