始まりの進行
風邪を引かれてしまうと自分が看病することになる。
ボクは数年前に事故で両親を無くして、親戚もおらず、両親の保険金と補助金で何とか一人で生きてきた。
なんとか高校にも行けたし、勉強もバイトも頑張っている。
つまり、ボクが学校やバイトに行っている間は家には誰もいないということだ。
誰もいないとなれば、彼女が風邪を引いても看病できる者はいない。
彼女の体は小さくて白くてとても細かった。
病弱そう、と言われてもおかしくないほどか弱い見た目をしていた。
こんな子を病気のまま放っておくなどと、とても出来ない。
そう思い、ボクは彼女を風呂に入れた。
拭くだけではきっと風邪を引いてしまうだろうからだ。
「風呂に入って温まってきて」
ボクがそういうと、君は1度はボクの指さした方へ行ったものの、また帰ってきた。
そしてボクの腕を掴んで引っ張り始めたんだ。
「どうしたの?」
彼女はどうやら、風呂の入り方がわからないらしい。
一緒に入って欲しい、という意思表示らしかった。
彼女は見た目年齢が大体10歳ほどに見える。
ボクにそっちの趣味はないため、仕方ないなという感じで一緒に入ることにした。
ボクも濡れていたしちょうど良かった。
風呂で頭の洗い方やリンスとシャンプーの違いなどを教えてあげると君はうんうんと頷きながら聞いてくれた。
人の髪や体を洗うという経験がまずないため、不慣れではあったが、ボクはできる限り、丁寧に洗ってあげた。
その日の夜、いつもより少し多くご飯を作った。
数年間、自炊しているので料理は結構得意な方だった。
君にアレルギーがないかとか、心配は多かったけど、美味しそうに食べてくれる君を見て安心していたのを思い出す。
それでも君の表情の変化は小さくて、ほとんど無表情だったのだけれど。
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