出会った青年


悪魔との戦闘のあと、フラは森を突き進み、平原へと出ていた。


獣道が巨大化したような土がむき出しになった道を挟む形で森があり、その奥に平らな平原が続いていた。


時間にして約五時間。

凸凹な森の中を歩いてきたのなら、そろそろ足が痛くなってくるが、そんな様子はフラには見られない。


「確かここを左に曲がれば……」


自身の記憶を頼りに歩いていくフラ。

彼の目的地はまだまだ遠いが、少しずつ近づいてきてはいる。


「うわぁああああああああああああああ!!」


悲鳴が聞こえる。人の声だ。それも男。


「助けて下さいぃいいいいいいいいいいい!!!」

「え!こっちに来ないでよ!!」


涙を流し、鼻水を垂らしながら情けない手の振り方で走ってくる青年。


後ろには青年の二倍近い悪魔がいた。


「ギャルァアアアアアアアア!!」


このまま逃げてしまってもいいのだが、夢心地が悪くなったりしそうだった。


フラは仕方ない、と息を吐き一発。


断罪ジャッチメントの前に魔法陣ができる。

かけた魔法は速度型魔法。


言い忘れていたが、保護魔法にもいくつか種類がある。


一つがこの"速度型魔法"。速度に関するものすべてがこの魔法に分類される。


二つ目が"防壁型魔法。あらゆるものから物体を守る魔法のことを指す。

フラがつけているネックレスがこれに分類される。


三つ目が"重量型魔法"。重さを変えたりすることができる魔法だ。


この三つのうち、フラは速度型魔法が得意であった。

そのため今回もいつも通り速度型魔法を使い、悪魔を倒すことにしたのだ。


青い魔法陣を通った赤い銃弾が吸い込まれるように悪魔の額へと飛んでいく。

風船を割ったような破裂音がすると、悪魔の頭が破裂した。


「す、凄い……」


たった一発で悪魔を倒したフラ。倒れた悪魔を中心に砂埃が舞う。


「………大丈夫ですか?」


フラはこんなことまでする必要はない、とは思っているが、なんとなくこの人は今までのクズ野郎とは違うと直感で感じた。


「あ、す、すみません!!助けてくれてありがとうございます!!」


青年は尻餅ついていた体を急いで立ち上がらせ、ぺこぺこと赤べこのように頭を振っていた。


「いえ、たまたま通りかかっただけですので」


年上ということでいつもより丁寧に話す。


「それでもですよ!!あ、名前を言ってませんでしたね!!僕の名前はゲルニア・フィレンツェです!!あと敬語はやめてください!!命の恩人ですから!!」


茶髪の好青年といった雰囲気を持つゲルニア。大体二十歳ごろだと思われる。癖のある髪、元気はつらつといった風に笑顔で話しかける。


「え?ああ、うん。わかったよ。僕の名前はフラ・ヴァレンーーーじゃなかった……えーと……あー、アイン……アイン……」

「アイン?」

「アイン・フィレ……アイン・ベルオーガ…うん僕の名前はアイン・ベルオーガだ」

「アイン・ベルオーガさんっていうんですね!!」


何が嬉しいのかフラの手を掴み、上下に振って喜ぶゲルニア。

それに少し苦笑いしながら何故か罪悪感を覚えていた。


(こんな人を騙すなんてな………)


偽名とはいえ騙したことに変わりはなく、何よりフラにとって初めて良い印象を与えた人物だ。少しばかり罪悪感を覚えるのは仕方なかっただろう。


「それで、どうしてこんなところに?」

「ああ!!忘れてた!!実はですねーーー」


ゲルニアが話したのはフラにとって憤怒を覚えるものだった。




ゲルニアは三人兄弟だった。父は魔王の爆発際、当時五歳だったゲルニアと他二人の兄弟、母を残し亡くなってしまったらしい。

母は病弱でまともには働けそうにはなかったが、子供を守るため身を粉にして働き、ある時は盗みもしていたそうだ。


五年たったある日、母が過労死した。

ゲルニアが十歳になる頃にはすでに国は崩壊。弟達を守るために母と同じく奴隷と同じ程度の報酬しかもらえない職につき、必死に今まで生きてきたという。


だが、その七年後弟達が亡くなってしまう。

一攫千金を狙った弟達がコロシアムの闘技場に出場し、死んだのだ。


さらに、一昨日その町から追い出されることになる。理由は横暴な理由で、そこをおさめていた領主がムカついたから、だった。


街を追い出されたゲルニアは当てもなく歩いていたところ悪魔に襲われ、今に至るという。



「なんて奴らだ……」


フラは決める。その領主とやら達を倒そうと。


「ゲルニア。一緒にその領主達を倒さないか?」


キョトンと目をパチクリさせたあと、真剣な表情になり、決心した。


「こちらこそお願いします。あいつらにギャフンと言わせたいです」
















「ん?」


そのタキシードを着た者はふと地平線を眺める。


「…………初めは勘違いかと思いま死たが、どうやら違うようDEATHねぇ。……魔法を使えるものがいますか………」


顎ーーー顔ではないがーーーに手を置き、考えている様子だった。


「どうやら計画が少死ズレていますねぇ。……はてはてはて……どう死ま死ょうか…………うーん、我々の計画を死っていたものがいたのDEATHか?………誰なんで死ょうねぇ…」

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