悪魔との戦闘
昼食を食べ終えたフラは一人、森の中を歩いていた。
街の外は全く開拓されておらず、自然が豊富で、草が生い茂っていたり、食用のキノコなどが生えていた。
フラが転移してから五年経った今、フラは見覚えのないものがたくさんあった。
例えば銃。これは転移前にはなかったものであり、たった十年で作れるものなのかと疑問はあるが、これに魔法をかけることによって、杖より何倍も威力が違うので、愛用している。
この五年間、フラは世界を旅してきた。あらゆる場所に行き、今がどうなっているのかを調べたのだ。
調べた結果、世界は荒廃し、ラインハルト達は悪者扱いされていることがわかった。
フラが行った街でも、街としての機能はほとんど無く、ただ生きるためにそこに過ごしているというものだった。
そんなところでもフラは襲われたりしたが、いくら弱くなったと言ってもあのフラ・ヴァレンシュタイン。たかがチンピラの一匹や二匹に負けるはずがなく、逆に金をぶんどったり、金の玉を潰してから去る、というのが普通だった。
フラはこの世界を救うつもりなどどんぶりの中にある米一粒分もない。なぜこんな例えをしたのかは不明だが、フラは命を懸けてまで守った仲間達を悪者扱いし、生きる意味をなくしたもの達に救いを与える気持ちは無かったのだ。
救いを与えるというと、ずいぶん偉そうだが、実際フラにはそれだけの力がある。
フラが先頭に立ち、みんなを率いていけば人類は悪魔を殲滅できるだろう。
しかし、それをフラはやらない。見捨てたのだ。
一度だけ救いの手を差し伸べた時があるが、差し伸べられた側がそれを悪用し、自身の欲を満たそうとしたため、フラはそいつを殺した。
フラの中ではこの世界の住民=クズ野郎という方程式が出来上がっている。
ただ、もしかしたらフラがいまだに旅を続けているのはほんの少しだけ、希望を持っているからなのかもしれない。砂漠の中にある一粒のダイヤを見つけるようなものだが、そのダイヤが見つかるかもしれない、という希望を持って旅をしているのかもしれない。
「ん?」
首にかけたネックレスが光り始める。
森の奥から人型の何かが歩いてくる。
前に毒ガスが蔓延していると言ったが、あれはあってないようなものだ。
理由は一切わからないがあの毒ガスは軌跡を持つものには効かず、唯一効くのが、フラのみなのだ。
「……ギ…ィ……ガ……ギャ……」
出てきたのは異形の者。全体的に痩せこけて見え、一見弱く感じるがそれは違う。
その体の中にエネルギーが溜まっていることを周りの草がそれを証明している。
その者ーーー悪魔が歩く度に踏まれたところは腐敗し、土へと帰る。
第三関節まであるその四本の手が、その赤黒く魅惑的なその肌が悪魔であることを強調させる。
「悪魔……か…」
呟くと同時に悪魔が襲いかかってくる。
だが、木が沢山あるこの森で、デタラメに襲いかかるのはあまり得策ではないが、そんなことはこの悪魔には通じない。
「木が……」
木の枝が次々に折れ、さらには大木までもが折れる。
地響きが鳴り、悪魔の咆哮が轟く。
「ギギィヤァアアアアアアアアアアアア!!!!」
悪魔に知性はない。あるのは人を殺すという本能のみだった。
「おっと……危ないな…」
とは言ってもデタラメに腕を振り回す様は子供の癇癪のようで、滑稽だった。
「攻撃が見え見え」
そんな攻撃がフラに当たるはずもなく、少し呆れたように呟きながら、
それを横にかわし、一発撃つと金属がぶつかり合った時と同じ音がし、弾かれる。
悪魔には鋼鉄な肌と強靭な肉体、動体視力がある。
普通の人には悪魔は殺せない。しかし、フラは弾かれたというのに、焦りもせず距離を縮め、
「ギャ……ギャアアアアアアアアア!!!」
人の悲鳴のような声。飛び出る鮮血。
悪魔にも血はあり、心臓はある。
目を抑え、暴れまわるがフラはそれを予測していたかのように避け、胴体、肩、背中、右足の順に切り刻む。
体の半分が細切れとなった悪魔は立つことすらできない。
「さようなら」
パンッ、と乾いた音が響いた。
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