屋敷での戦闘3


「で?そこで見てる君たちは何なの?やるの?」


グルリと辺りを見渡し、少し呆然としている男達を見る。


その声を聞き、一人の男が反射的にフードの者に向かっていくと、釣られてほかの者もフードの者に走っていく。


初めに後ろの方にいた男が、手から光の玉を出した。そういった軌跡なのだろう。

その光の玉はフードの者に伸びていくと腹の辺りで、発光した。


その光が部屋を占めるのはほんの数秒だった。たしかにほんの数秒だったが、その数秒が争いでは命取りになると男達は知っている。


その数秒でフードの者まで近づき、すでに大剣を振り下ろしている男からは笑みが漏れていた。

いくらなんでもここからならば避けられるはずがない、と。


「遅すぎる」


だが、フードの者は淡々と作業のようにその大剣を素手でいなしていく。


これには流石の男も驚いたようで目を見開き、固まっていた。

当たり前だが、フードの者がその隙を逃すはずがなく、呆気なく蹴りで飛ばされ、奥にいた男を道連れにし、意識を失った。


「残り七人……いや、八人」


そう言うと、フードの者が突然横に手を出し、何かをつかむ動作をした。


「なっ!!」


この家の外から聞こえる男の驚いた声とフードの者の手の中から聞こえる鉄が砕けた音。


男は木と鉄でできた筒状のものを持っていた。

それは狙撃銃と呼ばれる遠距離から撃てる強力な武器で、当たれば重症だろう。

それをフードの者は手で、無傷で取ったのだ。驚くのも無理はない。


「なるほど……さっきの光の時に転移する軌跡で、既に彼を転移させてたのか……少しはできるじゃん」


賞賛するような言葉だが、声に力がこもってなかった。


「そっちが銃を使うって言うんだったらこっちも使おうかな」


右手で取り出したのは銀色に輝く、装飾が施されている美しい銃。

手元は黒く、銃口が長いリボルバー式の銃だった。


「本当は対悪魔用なんだけどね」


ボソリと呟いた声は誰にも届かずに虚空の中に消えていった。


パンッパンッパンッ、と三連発、乾いた音がする。

その音の発生地はフードの者のところではなかった。

フードの者から見て右後ろの帽子を被ったカウボーイのような者から音が発生したのだ。

彼が持っているのは同じくーーーフードの者が持っていた銃より美しくないがーーーリボルバー式の銃。ところどころかけていて、何年も使っているのがわかる。


そこの銃口から三発銃弾が飛んでくる。

しかし、フードの者は焦りもせず、後ろも見ずにその銃弾より早いスピードで三発撃つ。


持っていた銃口の前に円ができる。円の中にはもう一つ円がある。ドーナッツを思えば分かりやすいだろうか。


その円と円の間にいくつもの文字で書かれたが構築されていた。

これを男達は見覚えがある。だ。


発射された銃弾が魔法陣を通ると、通った場所から赤い色を帯び、加速し始めた。


そして、男が発射した銃弾とフードの者が発射した銃弾が火花を散らし、ぶつかり合う。


フードの者が撃ったその銃弾は男が発射した銃弾を、触れたところから凹ませ、遂には一㎜の厚さまでに潰され、貫通する。

ほかの二発も同様だった。


その銃弾は威力を落とさず、男の顔に向かっていく。

男の脳、心臓、肝臓の急所の所に銃弾は当たる。

男は後ろに引っ張られたかのように頭から吹き飛ばされ、地面に口づけした。が、血は出ていなかった。


「安心しなよ、これは悪魔にしか効かない特別な銃だからさ。怪我もしないし、死にもしないよ」


そう言ったフードの者だったが、男達の顔色はすぐれない。どうやら怯えているようだった。

フードの者はなぜそんな怯えるのか分からず、首をかしげる。

少し体を震わせながら一人の男が聞く。


「お、お前。なんで…魔法が使えるんだ?」


フードの者が納得いった、とばかりにポンッと手と手を合わせる。

そして、意地悪く笑いながらこう言った。


「さぁね?どうしてだろうね?残念ながら僕にも分からないんだ」


嘘だ、と男達の心の思いが重なった。

コイツは知っている、魔法が使える理由を、と。


魔法を使える。それは魅力的だ。どうやって魔法を使えるのか知りたい。だが、同時に魔法の恐ろしさを知っている。


何百年と研究され、最適な使い方がわかっている魔法と、未だ十五年しか研究されておらず、使い方もまだまだ改良の余地があり、魔法が使えたら、と言う者も珍しくない人気のない軌跡と比べたら確実に魔法の方が上だった。


「後は七人か。さっさと終わらそう」

「ヒッ!!」


情けない声を出しながら、男達は倒されていった。


数十秒後、立っているのは二人だけだった。フードの者と、短剣を持った震えた男だ。


フードの者が最後の一人を倒そうと、男の方は振り向くと、ヒッ、と言いながら短剣を落とし、腰を抜かしていた。


「な、なんなんだよお前ぇ!!なんで魔法が使えんだよぉ!!おかしいだろ!!」


恐怖を紛らすように声を荒げる男。


一瞬のうちにほかの六人がやられたことで、恐怖心が増幅されたようだった。


フードの者はその言葉に反応せず、銃を向け、意識を刈り取った。

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