死神纏いし仮面の騎乗者
第61 話仮面ライダー大好きなロリっ子が過去を克服するようです
有紗は元々死神と呼ばれていたの。
今はもういろんな人に助けてもらったから歩き出せている。
そんな今だけど・・・。
いいや今だからこそ、本当に良かったのかなって思ったりする。
元々の世界を投げ出して良かったのかなって。
それに、ビルドが始まる前だったから・・・。それも見たい。
・・・なんてね。確かに見たいけど、投げ出した有紗自身がそん事を望むのは論外にも程がある。
"死神"なんて呼ばれてた理由は分かってる。
有紗の
仮面ライダーWの有名過ぎる名言にこんな言葉がある。
『さぁ、お前の罪を数えろ!!』
有紗の罪ってなんなのかな・・・?
もし・・・。もし望んでいいのなら・・・。
一度だけやり直して・・・。その罪を見つけ出して・・・数えきりたいな。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「んっ・・・」
私、有紗はいつもとは違う硬いベッド場所で目を覚ました。
窓の無い部屋に小さなテレビ。壁には仮面ライダーのフィギュアやDVDが所狭しと並んでいて、ベッドの下には変身ベルト。
「・・・有紗の・・・部屋?」
そう。ここは有紗が地球で元々使っていた部屋、私を閉じ込めていた地下室みたい。
有紗が死神たる象徴。
有紗は小学六年生だけど、ここ数ヶ月はもう学校に行っていない。
行ったところで誰も得しない。それはママも分かってる事。だから有紗は自分からこの地下室を使う事を求めた。
服装はいつものパジャマ。服を脱いで着替えたら部屋の扉にある猫用の出入口に落としておく。
「今の時間は九時二十四分。それに八月二十七日・・・。有紗が異世界に行く八日前・・・」
『はぁ・・・。ちょっと違うかな』
落ち着いた男の人の声・・・。死神さんだね。違うってどういう事?
『僕が知っている
せ、世界を創る? 文字通り?
『そうそう。今回の場合はキミの記憶の中からキミが経験した過去を元に別の世界・・・。いや記憶を覗くことすらせずに元々居た世界の記録を覗いたという事も考えられる・・・』
うーん? もう死神さんの説明は難しいよ!
死神さんは有紗に難易度の高い説明は無理だと思ったみたいで、ため息をついた。
『とにかく、今出来ることを調べた方がいいね』
あ、そっか。ここで魔法が使えるか使えないかでだいぶ違うもんね。
有紗は息を整え、意識を集中させる。
「
体内の魔力の流れを感じながら、それが体外にするりとまとわりつくのを実感出来る。
「魔法は・・・使えるね」
つまりは昔の私じゃない、今のスペックで元の世界に戻って来たって事になる。
『元の世界、って訳じゃないと思うけど。魔法が使え・・・、いや元々使えていたから一概には言えないか』
でも
という訳でいつも弄っていたおもちゃ箱を開くと、懐かしいものが出てきた。
「おー! ちゃんとWドライバーがある!『さぁ! お前の罪を数えろ!』ってね」
ノリでベルトを装着して、縦にメモリを二つセット。
そしてそれを開いて・・・変身!
『"サイクロン、ジョーカー!"』
というサウンドと変身音でテンションを上げていくー!
そしてWドライバーを外してメモリスロットが1つしかないロストドライバーを取り出して腰に巻き付ける。
鏡の前に立って、ジョーカーメモリをいい感じに顔の前に持ってきつつ、決めポーズを決めて・・・。
「"どうやら切り札は、常に俺の所に来るようだぜ"」
『"ジョーカー!!!"』
メモリをスロットに差し込み、いい感じのタイミングまで待機音を楽しむ。
ここで思わぬサプライズで、死神さんがドライバーから紫のオーラを発生させてくれているのが嬉しい。
「・・・変身」
ガシャリとメモリスロットをズラして変身の気分を味わう!!!
このカッコ良さ! 久々に出来たのが嬉しい!
『久々にやってるね。楽しい?』
「楽しいよ! やっぱりライダーはWだよね!」
私の部屋には平成ライダー全員分のベルトがある。もちろん2号ライダーのものまで。
とりあえずもう一つお気に入りのやつやってみようかな。
「シャバドゥビタッチヘンシーンwww」
『有紗、笑を生やすのはマナー違反だよ』
ええ〜。いいと思うけど・・・。まあいいや。
『"ヒーヒー ヒーヒーヒー"』
仮面ライダーウィザードのモチーフは魔法使いだったから、今の有紗みたいな感じ?
『うーん。"魔女"を普通の魔法師と同じに捉えられるのも困るんだけどなぁ・・・。まあいいや』
・・・とりあえず最低限魔法を使えれば問題無し。
「今日は平日だからママはいない。部屋の前にご飯が出てるよね」
そう思ったので有紗はご飯を取りに行く。
扉の前にあったのはいつもの冷めてお湯を吸い切ったねこまんまと、・・・手紙?
それは普通の横長方形の手紙だった。いつもはこんなもの置いてなかったと思うけど・・・?
『・・・
「あそっか。これに書いてある可能性があるって訳だね」
とりあえずとっても不味いねこまんまを無理矢理詰め込んで、その手紙を開けてみる。
中身は可愛いピンクの子供っぽい紙で、そこに書かれていた事は・・・。
『"みんなとなかよくなろう!"』
・・・。
・・・。
「冗談言ってるなら破ってもいいかな?」
なんか・・・。その・・・。
予想以上に無理難題でびっくり。
『・・・そうだね。この状況からキミが仲良くなるとか本気で難しそう』
ママからは虐待されてて、学校の人からは嫌われてる。パパはいないし、頼れる人はいない。
「詰みじゃない?」
うーん。有紗は頭がいい方じゃないから、一人で考えても出てこなさそう。
『仕方ないなぁ・・・。僕も手伝うよ』
でも、前とは違うところ。それは死神さんが有紗の力になってくれてるところ。
『地獄の底まで死神と相乗りする覚悟はあるかい?永朽の魔女、一之瀬有紗』
ちょっとアレンジ加えてるね。
「もちろん! ・・・だって私達は"二人で一人の魔法師でしょ?"」
知恵を振り絞って、力を思いっきり使い切って・・・。自分の過去を克服するんだ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その頃、発端である
「期限は全員一週間。この中から誰が一番早く俺の元に辿り着けるか、そういう
この創り出された世界は無色の世界であり、文字通り元々何も無い。
しかし
広さは比較的狭く半径500m。その中心で寝ているというわけだ。
「・・・む?」
「小僧・・・。どういうつもりだ?」
無理矢理こじ開けられた空間から現れたのは燃え上がる炎の化身。それは
「ようこそ俺の世界へ。
炎を司る神が二人揃った中、クトゥグアの後を追うのは金髪の青年。
「
それはアイクレルト王国現国王ウェスカー・ネルトス・ルイ・アイクレルトだ。
「俺も試練を受けたかったけど・・・。これはこれで良しとしよう」
不敵に笑みを浮かべるウェスカーに対してクトゥグアは鳥のような顔は怒りの形相だった。
「小僧! 葉鍵の守護者だからといってやっていい事と駄目な事があるだろう!」
そう言われた
「既にクトゥグアさんは気が付いている、という訳かぁ。しくじったかな・・・」
「ルールに則れば、試練は己の力のみを使うというものだ。しかし貴様は一つだけ別の"世界"を使っている。これは我も見過ごせまい」
試練とは、"特異点"や他の世界における『鍵』の一本を守護するもの"葉鍵の守護者"が取り仕切るものであり、その守護者へ挑むためのものだ。
「貴様が作れる世界は六つ。そして今回使用している世界は七つ。これは試練の規定に反する事」
クトゥグアはギリギリと歯の音を立てながら睨めつける。
「はぁ。僕がクトゥグアさんみたいに初期からいる神じゃないからって当たりが強いねぇ」
「ふうん? 面白そうな話題ですね。
何気なく尋ねたウェスカーだったが、クトゥグアの視線で何かを察し、手を振って会話を切った。
「それに、だ。我と一騎打ちをして貴様に勝ち目があるとは思っておるまい」
クトゥグアの序列は第五位で
「それは俺の世界が一つもないときの話。今世界が六つある以上・・・。相打ちにまでは持っていく気だけどね」
素因級魔王因子『世界』は自分を創り、その数戦闘力を倍加させるという特性がある。現在
「・・・それが今回の試練という訳だったか」
「あれ、クトゥグア殿、気付いてらっしゃらなかったのですか?」
煽るように言うウェスカーを睨めつけるクトゥグア。
「これくらい聞けば誰でも分かりますよ。とりあえず俺達はこの試練の行方を見守るとしましょうか」
そう言ってウェスカーは自分の椅子を取り出し、魔道具の擬似太陽を天に置いて寛ぎだした。
「・・・アイクレルト殿、分かっているのか?」
「ええ。もちろん」
ウェスカーはパラソルを取り出し、この試練の結末までね、と言ったのだった。
現代兵器使ったら異世界で無双できるなんて誰が言った? ぶなしめじ @jijiji07142
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