第40話 少女は何を望み何を求めるのか
ベルは
「
ベルが選択した攻撃方法は突きだ。突きは
「グルァァァァァァ!!!」
すると
実際は硬質化していないのだが、周囲の物質が腐っているため
「・・・っ!」
ベルはブレード攻撃の場所を予測し、自身の攻撃ルートを決める。
「
魔法盾を移動地点へと展開する。だが、肝心の一歩目に使う魔法盾はベルの付近に存在しない。
『おいおい! ミスったか!? 俺が盾貼ろうか?』
アディルが魔道具から声をかける。
「いやいらねえよ! 気遣い感謝だぜアディ兄!」
そして黒のブレードとベルの
その瞬間にベルの付与した魔法、
そして二撃、三撃と読んでいたかの様にブレードが襲い掛かる。しかしベルの
「ちっ! 隙がねえ!」
ブレードの総数は100枚近い。それらに触れると例えエリスのずるめな魔法があるとしても魔法としての攻撃であれば一瞬で体が腐り果てる。今のベルは全てのブレードを触れずに掻い潜り、そこから攻撃の活路を見出すというほぼ不可能に近い事をやろうとしているのだ。
ベルは
そしてブレードの生成が一時的に止まる。
「
『レクト! 今だ! 撃て!』
アディルがレクトへと指示を飛ばす。レクトは
「グルァァァ!!!」
貫かれた左目からは血ではなく黒い粒子が溢れ出している。
その痛みの末、
「ばっかやろっ!」
『5番機、
アディルの魔法でベルは地面へと降りる。ベルの頭1つ分上を
『5番機がやられちまったか。まあいいぜ。俺にゃこれくれーしか出来ねえもんな』
「いや、アディ兄今のは助かった。今のが無かったら死んでたぜ」
こうしている間に
そして再び
「・・・作戦を考えるから30秒くれ
そう言ってベルは地表から飛び上がり、ブレードの回避を始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「
「〈夜刀神・夜谷霊威〉」
五本の龍雷と、闇の波動砲が激突し、辺りに闇と雷を撒き散らして消滅する。
案の定、と言うべきか。エリスとバーロンが戦っている場所は既に民家の欠けらも無い更地であった。
「・・・中々お強いですね」
エリスの予想以上にバーロンは強く、現段階では互角だったのだ。しかしそこへエリスは転機を挿す事にした。
「少し雑談をしましょうか」
「この状況で雑談とは。・・・舐められていると思われても不思議では無いのだけどね?」
確かにそれはエリスも理解している。しかしこの場でしか聞けない事を聞くためにはこのお互いが一息ついたタイミングしかないのだ。
「何故今、ここまでの大幅な軍拡が必要になったのですか? 現状、魔王ディステルの勢力は大きいはずです。それなのに・・・と、考えてしまいまして」
「・・・それを言って私にどんなメリットがあるのかな?」
「現状、この雑談は時間を稼ぐために行っている事はお気づきでしょう。それはお互いに同じ事です。バーロンさんは今、出来るだけ長く私の相手をしなければならないのですから。話していれば勝手に時間が過ぎていきますよ?」
バーロンの裏の裏まで読み取り、敵すらも丸め込み情報を得ようとする。
「・・・私達がしようとしている事を理解しても君達にはどうする事も出来ないさ。なら、一つ交換条件で教えてもらおうかな」
「何をですか?」
エリスは何を尋ねてくるかは分かっていたが、あえて尋ねた。
「何故今
エリスはクスッと上品に軽く笑う。
「今の私に目的はありません。私の周りの人達がいつも楽しいと思っていてくれれば構いません」
「この現状で、誰が楽しいのかい?」
「今は、です。この後楽しくなりますよ。・・・それに、龍王は絶対に
最後の言葉こそ、エリスがこの作戦を行った理由だ。例え龍王の姿になろうとも、有紗の午後0時までという時間制限は残っている。
「これまで、私達は戦いながら思いの答えや気持ちを見つけてきました。生き物は誰であろうと成長し、無限にある様々な答えを探しています。有紗ちゃんはきっと、見つけられますよ。彼女は私とは違って一人で見つける必要は無いですから」
「・・・なるほど面白いね。・・・おっと、残念ながら任務完了だ。気分が変わってもう少し話していても良かったと思ったが、此方は依頼している身なのでね。・・・だが、次に会った時は私が軍拡をしている理由を話してあげようじゃないか」
バーロンは
「ん〜! 終わりましたね!」
体を伸ばし、リラックスするエリス。これ以上気を張る必要は無いと思っている。
いや、気を張るのはもう少し後の事だろう。
「・・・何が起きているのでしょうか? 少し調べる必要がありそうですね。・・・周辺惑星を軽く滅ぼせる魔王が二人がかりで動いてるとなるとただ事では無いのでしょうけどね」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ベル・・・かっこいい・・・
今、
『君はいつまでそんな事を言っているのかい?』
・・・へ?
『君はいつまでもお姫様気分だね。何故僕がここまでしているのに分からないのか・・・』
私は
『・・・はぁ』
どうしてため息をつくの?
『君はどうなりたい?』
どうって・・・?
『君にとっての憧れのヒーローを、何故掴みに行こうとしないのか? 何故その努力をしないのか? 君にとっての憧れのヒーローを、何故君は憧れのままにしているのかを教えてくれないか?』
私は、ベルみたいに強くないから・・・
『だから? それは甘えじゃないのかい? こっちの世界に来てから僕達
そう言われて私は気がついた。
・・・ううん違う。多分知っていたの。この思いは私の中にあった。でもそれは高望みだと思ってた。
『いいや。僕がいるさ。一人で成し遂げられないのなら僕と成し遂げようよ。・・・さあ! 本当の君の気持ちを叫んでくれ!』
・・・私は・・・私は!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
しばらくベルが回避を続けていると
「は!? どういう事だ?」
『レクト! 今だ射撃を・・・』
と、言ったアディルの魔道具の前でベルが手で制す。
『何やってんだよ! チャンスじゃ・・・』
「まてよアディ兄。ちょっとだけな」
そして
「・・・私は!」
それを聞いたベルはアディルの方へと笑いかける。
「私は! 一人で戦える様になりたい!」
「誰かに守られてる自分じゃなくて! 誰かを守って! 誰かの隣に居れるように!」
「だから強くなりたい! いつかベルの隣で戦えるくらいに!」
「だからお願い死神さん! これから私に力を貸して下さい!」
その瞬間、辺りに蔓延していた
「な? 言ったろ?」
『あのアリサがここまで言うとはな・・・。にしても、ベルの隣で戦うって言ってたぜ? 目標高ぇな』
「いや、そんな事はねえよ。今のチビ助は正真正銘の『魔女』の一人だ。力をものにすれば俺を軽く超えてくぜ? ・・・けどよ」
ベルはにぱっ、と威勢よく笑う。
「アイツが目標にして来たんだ。だったら俺がもっと強くなってやる! ぜってーに追い越せなくしてやるよ!」
そう言ってベルは
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