第34話 デート・・・かな?
デート。それは日時や場所を定めて男女が会うこと、という意味だ。
俺とエリスの場合は日時や場所を定める必要が無いためその後の、何処かに行って色々なものを楽しむ、という点が重要なのだ。
だが・・・。
「
裏路地に入ってすぐにガラの悪そうな男達がいたのでエリスが魔法をぶっぱなす。
雷の龍が路地を荒れ狂い、落ちていた瓶やゴミ箱を爆散させる。
「ひぇぇえええ!」
案の定、ガラの悪い男達は逃げていく。
「ふう〜。こうやって魔法の一つを放つだけで気分爽快です・・・はむぅ」
エリスが魔法を放った後の路地は至る所で焼け焦げている。まるで放火があったかのようだ。 そして何事も無かったかのように昼食のサンドイッチを口にする。
「・・・これがデートか、あむ」
今、俺の常識が確かめられている。人の事を言えないが、俺もサンドイッチを食べる。あ、美味い。
「そうですよ。
お父さぁぁん! 変な事教えるなよ! 歩きながら心の中で絶叫した。
「これも社会貢献の一環ですよ。この機会に更生してくれればいいんですけどね」
「・・・どうなんだろうな」
ノーコメントで。
「でもレクトさんと出会って変わりましたよ。以前はこういう人達を見かけたら消し炭にしてましたから」
「・・・消し炭って、物騒だな。それにそこら辺の法整備ガバガバじゃないか?」
俺がそう問いかけるとエリスが、せっかくのデートなのに〜、と言ってくる。・・・俺の常識からするとこれはデートでは無いぞ?
「そこは置いておくとして、この国では収入を得ていない人達、社会的不利益が被る人達、それとホームレスには人権が無いんです。ですから殺しても問題無いですし、ましてや私に文句を言う人は少ないですよ」
出ましたー。絶対強者の脅し発言。
「まあ、否定はしないけど程々にしとけよ。というか、魔法師序列上位陣の権力凄くないか?」
「それは、10位以内ともなれば一人一人が10分で一都市を容易く壊滅させれる力を持ってますからね。エイリプトさんに関しては一言呟くだけで街は機能しなくなりますし、外に出てる一般人は確実に死にますね」
そう言えばアディルが前に言ってた。「エリスやへスティアは無尽蔵に撃てて威力が10倍近い核兵器」みたいなものだって。
「あ〜? そんな奴が俺の婚約者とはね」
その言葉にエリスもご機嫌だ。
「そうですよ〜。・・・でもレクトさん。本当に私で良いんですか?」
エリスが心配そうに聞いてくる。急にどうした?
「まだレクトさんは私に恋心を抱いていない様な気がしてるんです。それにもう少し相手を見極める時間が欲しいのではと思いまして」
あー。そうだな・・・。
「俺には元々結婚願望なんて無かったし、そもそも好かれることなんて無かったからな。見極めるも何もエリスがそう言ってくれるなら受け入れるのが一番じゃないのか?」
「レクトさんその思考はダメですよヘタレ精神です。。・・・でもレクトさんらしいですね」
・・・どういう意味だろうか?俺は恋した事が無いから分からないな。どうやらヘタレ精神ってのが俺らしい。
「・・・気を付けるよ」
と言ってもどう気を付ければいいのか分からないけど。
「もう・・・。ちなみに、この国では一夫多妻制がありますけど、私は認めませんよ。あ、いました。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!」
あ、またぶっぱなしてる。
こんな事をあと3、4回程繰り返すこととなった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
エリスの気が済むまで魔法をぶっぱした後は図書館へと行く事にした。少し見たい系統の本がある。
「図書館なら普通のデートっぽいしな」
「ええ〜? 今までも普通のデートでしたよ?」
絶対に違う。 不良共を叩き潰すデートなんて聞いた事が無い。
「とりあえず・・・。どうすればいいんだ?」
「もう・・・。仕方が無い人ですね」
何だか嬉しそうに呟いた後、空いていた俺の右手を掴んで引いてくれる。
・・・そう言えば婚約者なのに一度も手を握って無かったな。
「お、おや? レクトさん、顔が赤いですね。ど、どどうしましたか?」
そう言うエリスも顔が赤い。
「ち、ちょっとな」
「・・・」
「・・・」
なんだろうなこの空気。
「あ、こっ、ここですよ。」
なんだかんだで先に口を開いたのはエリスだ。普通のテーブルだが、大きな
「欲しい所をタッチしていけば自動で飛んできますよ。・・・では『魔法書』、『新刊』、『攻撃系統』っと」
魔法書に新刊とかあるんだな。
飛んできた物は魔法の事が書かれた雑誌みたいなものだった。
「じゃあ俺は・・・」
俺は目の前の
すると、俺の前には数十冊の本が並ぶ。ちょうどエリスと同じくらいの冊数だ。
「レクトさん、編み物をされるんですね。なんか意外です」
「そうか? ・・・まあ、人並みに、って感じだけどな」
俺は地球での普通過ぎる人生をおくってきた。悪く言えば突出したものが無い。だがよく言えば、殆どは人並みに出来るという事だ。
「そろそろ冬ですからね〜。マフラーの一つくらい欲しいものです」
マフラーか。・・・いいかもな。
俺はノートPCを開き、wordと
『アクベンス。頼みがある』
『どしたの?』
『この本の説明を全部を今並列起動させてるソフトにコピー出来ないか?』
このPCはアディルの改造によって魔力で動くようになっている。そして自動魔力貯蔵庫が積まれているため、非使用時には勝手に充電される。
アクベンスには俺のPCへのアクセス権限があり、アクベンスがアクセス出来る機能がついている。
だったらアクベンスがwordに直接打ち込めば早いんじゃないかと思った訳だ。
『ん〜。出来なくもないけど10分くらいかかるよ』
『問題無い。助かるよ』
『いえいえ〜。僕も暇だしね〜。あ、ちゃんと開いとかないと作業出来ないよ』
俺は分かってる、と言って次の作業へと移る。
PCと一緒にアディルが改造してくれた携帯電話で本の写真を撮る。これで写真付きでコピーした物を見る事が出来るな。
ちなみにこれも魔力で動いている。
「この世界に撮影禁止が無く良かったよ」
5分程で写真を撮り終える。これで問題ないだろう。
「エリスは編み物とかしないのか?」
「私は一回も無いですね。物を編む時間があるなら戦闘訓練や魔法の勉強をしていましたから」
ペラペラと本を捲りながらエリスが返答する。
「料理は少ししますよ。手の込んだ物は出来ませんが、一般で作れるものはなんでも作れます」
「へぇー。それじゃあ今度料理でも作るか」
俺も一応作れる。エリスと同じく簡単で一般で作れるものだが。
「そうですね。お料理対決ですか。楽しみです」
エリスが嬉しそうに言ってくれた。
「あ、それとこの近くに糸系が売ってる店はあるか? あと針を買える場所も」
エリスがむう、と唸ってから、次はそこに行きますか、と言って本へ目を向けた。
俺もこの世界特有の糸を知っておきたいので本に目を向けた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ショッピングもデートっぽいな」
俺達は商店街にある糸の専門店へと来ている。エルフィム並ではないがここも大きめの商店街があるのだ。
「そうですね〜。私は魔法を撃ちたいですけど、レクトさんの用事ですので」
撃つのは自重しろよ。
店内は木造のオシャレな建築だ。これなら新宿や渋谷にあってもおかしくは無い程だ。
「えっと、確か・・・」
ここら辺の最高級の毛糸を買わなければな。今回は渡す相手が相手だからな・・・。
「すみませーん。
と、定員さんに言うと申し訳なさそうにやってくる。
「申し訳ございません。現在、それらは取りあっかって・・・」
そう言いかけた時、俺の後ろにいたエリスが前に出る。
「嘘はダメですよ〜」
・・・定員さん、ドンマイ
「は!? い、いえ。嘘などついていないのですが」
「そんな訳ないじゃないですか。心拍が嘘をついている時特有のリズム、入った時から今の体温変化、それに目線の合わせ方からして嘘じゃないですか」
さも当然とエリスが笑顔で言う。・・・これは敵に回したらいけないやつだ。
「で、ですが絶対に売れませんよ」
断固と拒否する定員さん。
「いやー。この雷閃の魔女、エリスを不快にしても良いんですか? 」
エリスが殺気? みたいなものを放つ。それだけで定員さんは察したらしい。
「ひっ!」
「ああ〜。分かりました分かりました。この店が違法な手口で高級糸を手に入れているという事にして吹き飛ばして欲しいという事ですね?」
・・・こうやって脅していくのか。
「分かりました! 売ります! 売りますので、どうか、どうか許して下さい・・・」
なんか向こうが可哀想だな。
「はい! でも、ここまで言わせたのですから半額でお願いしますね?」
「分かりました! 半額ですね!」
定員さんが泣きながら頷く。 もう、いっそ清々しい。
「それじゃあ・・・」
俺はエリスのお陰でマフラー3本分くらいの
「ああ・・・。予約分が・・・」
どうやら事前に予約をしていた人達がいたらしい。俺達は完全に迷惑な客だ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「いやー。いい買い物しましたね〜。
ちゅどーん!
不良共が吹っ飛んでるがもう突っ込まないからな?
「ありがとな」
「いえいえ。買い物もデートっぽいじゃないですか」
「買い物をするのもデートなんだよ!」
エリスといると常識が崩れそうだな。
「でも、楽しかったな」
という呟きに、エリスが笑顔で反応した。
「それなら、良かったです!」
この笑顔は・・・。心の中に閉まっておこうか。
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