このバイト女神に祝福を!(特別?編-1)
ギルドでの借金返済をクビになり、二つ目のバイトで逮捕までされてしまった女神アクア。仕事に対する悪評が街中でちらほら聞こえてくるように…。働き口が見つからなくなっている中、緊急の日雇いバイトがアクアに舞い込んでくるのであった。
「カズマさんカズマさん!日雇いでしかも高給のお仕事があったわ!!」
「どうしたアクア。皿も割って詐欺までする女神にできるような仕事があんのか?」
「どっちも私は悪くないわ! 二つとも雇い主が悪いのよ。それで今回のバイトは劇のチケット販売なのよ!」
「やめとけ」
「カズマさん? 今なんて言ったのかしら?」
「やめとけって言ってんだよ! 知能が最低なのにどうやってチケット売るんだよ! ってか計算できるのかよ。黙ってそこの近くで宴会芸でもやっておいた方が安全だぜ」
「カズマさんは私をなんだと思っているのかしら。計算くらいできるわ! 分からなくなったらてきとうにちゃちゃーっととっちゃえばいいのよ。後、宴会芸はやりたいと感じないとやらないわ。見せるためにやるものじゃないの」
「俺は知らないからな!? またバイトでやらかしたら今度こそ迎えに行かないからな!」
カズマの制止も効かずにアクアは無邪気な子供の様に屋敷を飛び出していく。あれは本当に女神なのだろうか…
屋敷にはアクアのもらったバイトのチラシが落ちていたのだが…
全力で走って行ったアクアはチケットを売るところへと早くついてしまい、まだ人は誰もいなかった。早く着いたから…
「アクアさん! いらして下さったんですね。私が今回の主催者です。今日はちょっと忙しくなりそうですがよろしくお願いしますね!」
「私に任せなさいっ! 私が売り子になればすぐに売り切れちゃうわ!」
前回の詐欺コロッケを売り切ったのが実は結構な自信になっていたようでこの仕事はやる気満々のようだ。しかし、アクア以外に誰も来ない。そんな状況に気付かず嬉々として仕事の時間を迎えた。
「では今日と明日でこのチケット売り切ってくださいね! お願いしまーす」
「え、あなたこのチケット二日間で売り切れっていうの?」
「そうですよ? あんなに自信ありげだったじゃないですか! アクアさんなら二日で一万枚くらいすぐですよ! 私、信じてますから」
「そ、そうね。私にかかればすぐよね!」
しかし、一時間たっても二時間たっても待てども人が現れない…
「ね、ねえ。主催者さん? これって本当に売り切れるのかしら…」
「売り切れるじゃないです。売り切るんですよ?アクアさん」
「ちょ、ちょっと私急に大事な用事を思い出しちゃったわ! そうね、残念だけれども私はここまでということで」
「それでもいいですよ」
「ほ、本当ね?! じゃあ急がなくっちゃ!」
「でも、売り残ったら全額買い取ってもらいますよ?」
「え」
「いそがなくていいんですか? 用事があるのでしょう?」
「やっぱりその用事は大丈夫そうね」
その後、怯えながら椅子に座りお客様が来るのを祈るように待っていたが全く現れることがなく、初日の発売時間が終了した。
「アクアさん、一枚も売れてないじゃないですか。すぐに売り切れると言っていた自身はどこに行ったのですか。売れないとあなた自身が困りますよ?」
「そ、そんなこと言われても…というかまずこんな街はずれで売っている方がおかしいのよ! こんなのおかしいわ!」
「まあ、今日は上りの時間ですしチケット五千枚ほど明日までに売って来て下さいね? あとこれはパンフレットです。三千枚ほど作ってきましたので渡しきってくださいね」
主催者はなんの悪気もないような顔をしていた。満面の笑みとでもいうべきだろうか。しかし、その顔からは想像もできないくらい厳しい条件を提示されたアクアは絶句してしまい、返す言葉がなくなってしまった。無言で受け取り彼女は去って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます