第15話 民話

39 K-1

久知野氏の始祖は、

この辺に伝わる古い民話に、神様の子孫として出てくる。




昔々、このあたりの広い範囲(現在の久知野市以上)が

日照りに襲われたりして、作物がみんな枯れてしまった。


このあたりの神様が何人か集まって話し合いをしていると、

人間の代表として呼ばれた村長(むらおさ)の一人が、

神様の一人を犯人として糾弾した。


その神様は、表現がいろいろあるが要は作物を枯らす神様だったので、

仕方がないと受け入れ、

話し合った結果他の神様の力と中和して過ごすことになった。

しかし、ずっと間借りして、

この地に神様がいないままにしておくわけにはいかない。


そこで、女神の一人がその枯らす神様との間に子供を作り、

村の人間にした。

子孫たちは目印として、

女神の力を持った者を「朽無」

男神の力を持った者を「朽野」と名乗るようにした。


ちなみに、名前の「朽」は、男神の

朽ちて散るなんとかのヒコ、

みたいな名前からとられている。




時代が下ると、

神様の子孫なんてあるわけない、というのと、

枯れるだの朽ちるだの縁起が悪いというので、

違う字を使うようになり様々な漢字や近い音が当てられた。

多いのが、

町の名前にも残った久知野と栗野。

例えば、俺の当時の住所も久知野市になる前は

栗野市(俺が小さいころは栗野町)だった。


そして、リーダーたちの会社で調べた結果、

俺の家である加野家は、

江戸時代から明治にかけては狩野(かのう)家で、

江戸初期には狩野(かりの)家で、

その狩野家には、

かつて別の場所に本家があり枯野(かれの)という名前だった

という文献があるんだそうだ。


そしてその「枯野」は朽野と関係がある家に見られた名前の一つだ。

俺は、久知野と同じ血を受け継いでいるのかもしれない。

クチナシやM子を守るには、

オカルト的なもの含め対策を取るために、

隠された情報をもっと知らなくてはいけない。


俺は一週間くらいそのお爺さんの家に預けられた。

(その間は家族や学校には入院だと伝えられた)

時間の感覚はあやふやだった。

食事の時間が一定だと聞いた以外分からなかった。

図書館と俺の部屋には時計がなく、

食事の前と日付が変わるときだけ、

呼び出しのチャイムが鳴る。

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