第十一世界 - 十九転生目

「異世界と心中してしまおうか」


 どこで間違えたのでしょう。

 そうぞうしゅに転生して新しく異世界を作ってみたところまでは良かったのです。今までの経験じんせいを結集させて、なんとか形にはなりました。

 もっとも、最近は異世界の供給過多が著しく、もっと安易に楽しめられる異世界コンテンツが増えすぎています。その中からわざわざこの世界を選ぶのはよほどの奇特な方には間違いありませんが、運良く気前のいい方たちでした。

 最初こそ不平不満はそれほどありませんでした。それもそのはず。その気前のいい人たちも一緒になってどうすれば良い世界になるのかを考えてくれたのです。そうして完成したのが安息と安寧のある隠れた秘境……といえば聞こえはいいですが、要するにこの異世界の評価は長閑な田舎でした。


 異世界疲れとでも呼べばいいのか、そういう人たちの憩いの場として緩やかながら人口は増えて人気になっていきました。


 ですが同時に、人々の不平不満もすこしずつ増えていったのです。古参層と新規層が対立しはじめたのでした。

 かたや「小規模人数だからこそ魅力だった」「昔は良かった」といい、かたや「人数が増えたんだからもっと快適にしよう」「神に頼ってられない。私たちだけでもやる!」という。

 

 結局、第十一世界ここは神による手を離れて一人歩きを始めました。世界観作りに没頭しすぎて管理が杜撰になっていた神も悪いのだが、気付けばどう対処すればいいか分からなくなっていました。

 神の権限を使えば、他人の能力値ステータスを弄ったり、不要な者を世界から追放することができます。しかし、これは世界を良くしたいという方たちの争いで、両勢力とも大きくなりすぎてしまっただけなのです。今ではどちらが悪いだのと安易には決められません。

 なので、神になるのはさすがに時期尚早、荷が重すぎましたと後悔して、今に至るわけなのです。


 もう世界と一緒に心中しちゃいましょうか、と。


 異世界人に荒らされた第十一世界はもう思い入れを感じません。十三人いた初期メンバーも今は九割ほど消えました。


「まだ残っててくれてる一割の元の住人たちには悪いですが……」


 弱い神でごめんなさい。神は限界なのです。神という役職をほっぽりだして、新しい人生を満喫したいのです。


 神は心中すると心に決めました。なので、個人的に気に入らないやつらを世界追放してしまいました。最期なのですから、このくらいの腹いせは許されます、きっと。


 ああ、次の人生では自分の力量に合った存在に生まれ変わりたいです。


 そう願いながら、神は心中てんせいしました。





  ――――プツッ

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