第七世界 - 十二転生目

「はぁ。マジムリ……転生しちゃおうかな……(T_T)」

 

 ウチミズハは机に項垂れる。自分で言うのもなんだが、なんて憂鬱なため息だろう。


 べつに第七世界ここ自体に不安があるわけじゃない。

 自分の使役した言葉がなにかしらの力を持って世界に波及するのは楽しいし、送り手と受け手が相互に影響しあって、さらに言葉の力を高めていくシキタリは素直に素敵だと思う。人口ヒトが多すぎるがゆえに競争率が高くて、職に就けるのは一握りであるところは難だが、ここではそれが普通な世界。職に就ければ一定の地位と名誉に築くことができるけど、それがなくて困ることもない。


 それに、第六世界ぜんかいに比べれば素晴らしい世界だった。だって、ウチミズハが人生を終わらせる前に第六世界のほうが先に終了してしまったのだ。もっと世界を調節すればどうにかなったかもしれないが、あそこの神は見るからにやる気がなかった。

 なので決して『ウチミズハ』に飽きたわけじゃない。つまり、場面なりゆき第六世界ぜんかいの人生設定を受け継いだままこちらの世界に転移したってこと。それが裏目に出た。


 第七世界ここウチミズハには合っていなかったのだ。というより第一印象を間違えちゃった。ウチミズハはこちらに来たとき人気なものに真っ先に食いついたのだけど、それは『男性のモノ』だったというウワサらしいー。男性趣味の物珍しい女という扱いで同性から嫌われるし、なんか下心丸見えな異性には言い寄られるし。これなら第三世界目のときの『僕』のほうがまだ性に合っていたのでゎ( ˙-˙ )?と思うワケ。第七世界は第六世界と同じ系統の世界だったから転生先に選んだんだけど、事前にもっとリサーチしておけばよかった(._.)。


 あと、『ウチミズハ』への思い入れが今までの人生よりも薄かった。『ウチミズハ』という特別感というかなんて言えばいいか……お下がりの服を着ている妹ってこんな感じなのかな。まぁ姉妹はいないからイメージでしかないけど。


 というわけで、葛藤に挟まれてのため息。


「はぁ。第五世界は楽しかったなぁ」


 第五世界あそこは時間を切り取ってそのときの感動を共有することができる世界で、めちゃくちゃ魅力的ドリーミーだった。切り取った時間を気軽に装飾できるのも実に素敵アメージングだ。

 ちょっと欠点ダメだしを言えば、感動を押しつけてくる承認欲求が強いやつらや、感動にこだわるあまりモラルが蔑ろにされることがあることくらい。まぁ、七転生目のアリスがそうだったのだけど。


「ああ、もうっ! 人生ってなんでこうもうまくいかないのかしら!」


 ウチミズハは勢いに任せて立ちあがる。

 過ぎたことをいくら悩んでても仕方ない。一つの人生には一つの人生分しか入らない。人生は有限なのだ。ダメな人生も、とっとと諦めて次に行かなきゃ(・ωー)~☆


 新しい人生設定を取り出して、と。

 今回は性別で困ったから……そうだ、次は性別を無くそう! 性別なんて結局はファッションなんだし、着れなくなった服と一緒にメルハリショップにでもさっさと売っちゃおう。


 次こそは! 絶対に絶対に! 『人生』を掴んでやるんだからっ(○`ε´○)!!


 そう願いながら、ウチミズハ死んだてんせいした ٩( 'ω' )و!





  ――――プツッ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る