第9話 守護輪
村の他の家と同じく、青い屋根の屋敷の主である大予言者カーラが、
困惑するゴンの前に現れた。
「…あらぁ〜」
出てきた大予言者は、ゴンの想像と全然違った。
黒尽くめで水晶玉でも持って、おどろおどろしい人物かと思っていたのだが、
実際のカーラは一体何歳なのか、
フワフワした白いワンピースを着て、頭には青い花の飾りを付けて、金の髪はクルッとカールさせて、色白細身のとても可愛らしい女の人だった。
いつも笑っているような垂れ目も可愛い。
「あなたがゴンちゃんね〜。うーん、確かにこれはすごいことになっちゃったかもだわぁ」
カーラはゴンにズイズイ近寄ってきて、顔や体をペタペタ撫で回し始めた。
そして、胸のお守りのあたりでピタリと止まった。
「これほどの守護輪を私以外にも作れる人がいるなんて〜」
「しゅ、守護輪?」
聞き慣れない言葉にゴンはやっと口を開いた。
実は、カーラはすごーくゴンのタイプで、触られたりしてすごーく緊張していたのだ。
カーラは、何か呪文を唱えながら、ゴンが首にかけていたお守りをスッと引き抜き、中身を出して素早くゴンの指にはめた。
そう、中身は指輪だったのだ。
「指輪だ…!」
「ええ。知らなかったのね?
これは守護輪という指輪なのよ。
双子の宝石、というとても珍しい石で作られているの。」
「双子の宝石?」
カーラの口からは不思議な言葉ばかり出てくる。
ちなみにカーラの声もゴンの好みドストライクなのだった。
耳元で聞くたびに背中がゾクゾクする。
「双子の宝石というのは、魔法使い用語みたいなものなの。
唯一、2つの世界に同時に存在する物質なのよ。
だから、この宝石を使ったものは2つのどちらの世界でも効果を発揮できるの。
ただし、とてもとても珍しい石だから、滅多に手に入るものじゃないわ。」
カーラはゴンにの手を取って指輪を大事そうに撫でた。
ゴンは彼女の白い指が触れるたびに顔が熱くなってしまう。
「カーラおばさま、この者は勇者タイガさまではないのですね?
邪悪の者…なのですか?」
カーラののんびりさにしびれを切らせたリンダが2人の間に割って入ってきた。
「うーん、そうね、勇者タイガさまではないわ。
邪悪の者かどうかは…分からない。」
リンダは今の言葉にかなり驚いた。
生まれてこのかた今の今まで、叔母であり大予言者カーラの口から〝分からない〝という単語を聞いたことなどなかったから。
「やっぱりボクは勇者タイガという人ではないですよね。
あの、ボクをあっちの…もう1つの世界へ返してください」
「それは無理よ!」
リンダは絶望的なことをピシャリと言う。
「1度反転生の魔法を使うのに、どれだけの労力がかかっているか知らないでしょ?!
少なくとも数ヶ月、1年は使うことは出来ないわ!
1年…1年も、この世界は持たない!!」
「持たない?どう言うこと…?」
まだまだ呑気に見えるゴンをリンダはキッと睨みつけて無視しした。
「カーラおばさま、それでは本当の勇者タイガさまはどうなったのですか?
あの日、あの場所に現れるはずだったのは、勇者タイガさまでは?」
カーラはゴンから目を離さずに言った。
「そうねぇ、あちらの世界から移動する瞬間に、勇者タイガさまと重なってしまったのではないかしら…」
「移動する瞬間…重なる…」
ゴンは鮮明にあの時の事を思い出した。
気を失っていた加西が、不思議な光に攻撃されそうになった瞬間、ゴンをかばって5つに千切れてしまった光景を。
そして
こちらにきた時森の中の木の陰に、悲しい顔をした青い鎧の人を見た…
それは、
加西だった!
あの時は分からなかったけど、
あれは加西だった!
「加西…なんで…どうしてボクは気が付かなかった?
加西の名前は…」
加西 大河 (かさいたいが)
加西の名前はタイガだったじゃないか!
加西こそが、リンダが待っていた勇者タイガだったのだ。
「…加西は…タイガはボクをかばって…」
ゴンは震えながらあの時の事をみんなに話した。
カーラとサミュは表情を変えることはなかったが、リンダはみるみるうちに顔面蒼白になった。
「アンタがタイガさまを殺したのね?!
この世界を救うことが出来る、ただ1人のお方なのに!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます