第10話 ロロジェム
要するに、こういうことだった。
こちらの世界がとある理由で滅びようとしている。
それを阻止できるのは、最強のドラゴンソードを操ることができる勇者タイガのみ。
しかし、勇者タイガはもう片方の世界に転生していた。
それで巨大な魔力を集めて勇者タイガをこちらの世界に反転生させることにした。
しかし、現れたのはタイガではなく、
ゴンだった…
「すみません…でも、ぼ、ボクのせいじゃあない…と…」
ゴンはカーラが説明する間ジィーッと睨みつけているリンダを横目に呟いた。
「あなたを庇って…ねぇ…。
えーと、じゃあタイガさまのご遺体はどちらの世界にあるのかしら…?」
「ご遺体なんてやめて下さい!」
ゴンは青くなる。
目の前でちぎれた加西を見てしまったが、まだ彼が死んでしまったとは思いたくない。
「タイガさまのお体を見つけられないのですか、カーラおばさま。」
「うーん。」
ちょっと困った顔をする美しい大予言者カーラ。
「それがねぇ〜、タイガさまの復活にロロジェムを使いすぎちゃって、魔力が使えないのよ〜」
「ロロジェム…」
また聞きなれないタンゴが出てきて戸惑うゴン。
「あー、う〜ん、そゆのもゴンくん知らないのね〜。
こちらの世界ではね、魔法はロロジェムという石を使うの〜。
これはとっても貴重な石でねぇ、さっき言った双子の石も、ロロジェムに入るわ。
でね、今回勇者タイガさまを反転生させるにあたり、ものすご〜〜い量のロロジェムを使ったのよ〜。
我が家の秘蔵のロロジェムちゃんたちも総動員してすっからかん♡」
やけに可愛いカーラの喋り方にゴンは照れつつ、
「宝石みたいなものかな…あの、あたらしく集めるってのは出来ないんですか?」
「だからすでに集められるところのロロジェムは集め尽くしてんの!
後はとても危険な所ばかりで…」
プンプン怒っていたリンダが急に黙り込んだ。
「そうよ…ゴン、アンタ、ロロジェムを集めてきて!せめてタイガさまを見つけられる分ぐらい!
こーなった責任を取ってもらうからね!」
「ええーーーっ!」
何故かサミュは愉快そうに笑っていた…。
「とは言っても、現実問題この子1人でロロジェムを集めるのは難しいでしょうね。
この世界の地形どころか、常識さえも分かっていないんだから」
クスクス笑いながらも、庇ってくれたのは意外にもサミュだった。
「だって、この子のせいでタイガさまは反転生出来なかったのよ!
この世界が滅びるかもしれないの!
責任取ってもらうのは当たり前じゃない!」
「そんなぁ…」
出会った頃は優しかったリンダが、厳しい口調になっているのでビビりまくるゴン。
リンダの可愛い顔が鬼の形相に見えてしまう。
「だからね、1人じゃ難しいって言ったんだよ。
2人なら、大丈夫かもよ?」
サミュはゴンにウィンクしてきた。
「サミュ、あなたが付いて行ってくれると言うの?」
カーラがキョトンとして聞く。
「ええ!オオカミの王の末裔にして人間の姫の子孫、四つ耳族のこのサミュがこの者のサポートを致しましょう!」
サミュは芝居掛かった仕草で恭しく大予言者カーラに頭を下げた。
「まー、サミュが同行してくれるのなら、ロロジェムも見つけられるかもだわ〜。」
「え、いいの?サミュさん…」とゴン。
「ああ、お安い御用さ。ボトルボートの船頭するもちょっと退屈していたし、冒険に出るのも悪くない。
どのみち世界が滅んだら女もお酒も楽しめなくなるからね、オレにとっては大損になるのさ。」
「ありがとーサミュさーん!」
ゴンは嬉しくて泣きそうになる。
やっぱり加西を探したいのだ。
「しっかり集めてきたよね!必要なロロジェムのリストは書いておくから!」
リンダは腕組みをしてフンッと言った。
「ちょっと待って〜」
カーラが耳に着けていた綺麗なピンクのピアスを外して、両手で挟み、何か呪文のようなものを唱えた。
「うわっ…」
カーラの両手から漏れ出すピンクの光。
「最後のロロジェムよ」
ピンクの光は三角形を描き、その中によく分からない文字が浮かび上がった。
「…リンダ、あなたもこの子に付いて行きなさい。
魔法の予言にはあなたが必要だって出てる。」
「えーーー!」
リンダの不満そうな声が部屋中に響いた…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます