第18話 会議開催前に領土クレーム
国際連邦本部で私たちを迎え入れてくれたのはトルト国際連邦総長の秘書カナンさんだった。
「申し訳ありません。総長がお迎えするように予定していたのですが、緊急に対処しなければならない事案が発生しました。僭越ながら代わりに筆頭秘書の私が参りました」
「いいえ、大丈夫ですよ。国際連邦総長ともなればお忙しいでしょうから」
「会談は予定通り本日の夕方になります。それまでお寛ぎください」」
「わかりました。よろしくお願いします」
私たちは今回の滞在のために用意された部屋に入った。
リビング・ダイニング・キッチン・風呂・トイレそして寝室が6つ。
使用人と警護の者の寝室と待機場所と風呂とトイレもある。
ダイニングに集まった私たちは現状の把握を行った。
周囲には声などが漏れないように結界を構築した。
これでここで話し合われていることが漏洩する心配はないだろう。
国際連邦総長が出迎えに出れなかったのはメルケ王国パルハ辺境領の領主パルハ辺境伯の領土クレームが原因らしい。
私の空間支配の索敵とパスロシステム君からの情報から判明した事実だ。
今回の会議にはパスロ大森林に接する土地に領土を持つ領主も招待されており、パルハ辺境伯はその一人だ。
彼の主張は鶯シティーから最も近いパルハ辺境領に鶯シティーを編入すべきだと主張している。
パスロ大森林はどの国も干渉しない神の領域だというルールを無視した暴論だ。
距離的にも境界から鶯シティーまでは540kmも離れており、大森林ということで普通に考えてたどり着くには二月ぐらいかかる。
国際連邦総長や同席している国際連邦都市の大神官も呆れている。
いくら正論で説得しても辺境伯は言うことを聞かない。
何かに憑りつかれているようだ。
パルハ辺境伯を遠隔で鑑定してみてわかったが、魅了と複数の精神支配を受けているようだ。
これは厄介だ。
悪魔が関係しているのだろう。
国際連邦都市内を調べてみる。
サオリさんとサユリ先生に状況を説明した。
「どうやら、辺境伯は悪魔から支配されているようです」
「近くに悪魔がいるのですか?」
「いいえ、この本部には悪魔を排除するような機能が付いています。ですからこの本部内にはいません。しかし市内にはいますね。下級悪魔2体と中級悪魔が1体」
「辺境伯の関係者ですか?」
「はい、市内の宿にいます。中級悪魔は辺境伯の妻に化けていますね。下級悪魔は部下に憑依しています。中級悪魔はかなり高度な隠蔽が使えるようです」
パスロシステム君からの情報で形の上では他の領主同様辺境伯本人と二人の護衛のみが神殿の転移を使ってこの街に来たことになっている。
妻は馬車で追いかけてくるということになっていたようだ。
普通に考えれば会議が始まる前に領土から馬車でたどり着くことはできないのだが、精神支配を受けている辺境伯と部下は気が付いていない」
大神官はアクセスレベルの関係でパスロシステム君からの中級悪魔の情報が入っていないようだ。
この後の国際連邦総長との話し合いでこの事案に対する対策を考えなくてはならないな。
しかし、本部内にいる勇者は悪魔が市内にいることに気が付かなかったのかな?
一度、召喚勇者の能力のチェックが必要だな。
やっと、総長と辺境伯の会談が終わったようだ。
結界を解除して夕方までお呼びが来るのを待つとしよう。
パスロシステム君と辺境伯領にいる密偵オートマタに辺境伯家の状況を調べるようにお願いした。
密偵オートマタには小型の高機能通信装置を持たせている。
特に辺境伯の家族がどうなっているか気になる。
辺境伯の妻は・・・・だめかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます