　先ほどまで降り続いていた雪は止み、雲の切れ目からは星が瞬いていた。

　日付は変わって土曜日になっていた。

　胸が締め付けられるような切ない思いを抱き、眠れぬ夜を過ごすこの男の名は田中義一郎（たなかぎいちろう）という。

　義一郎は悩んでいた。恋の成就と言えば聞こえはいいが、相手がＪＫであればそんな綺麗事では済まされない。自分が受け持つクラスの女子生徒に恋心を抱くなどあってはならない事なのだ。しかし、義一郎の意識はその女子生徒の事ばかりに集中してしまう。いつもふわふわと夢見るような表情で、その視線はどこか遠くを見つめている。そして、時々漏らすその過激なセリフが胸に刺さる。昨日の放課後も鋭い言葉を投げかけられた。

「バラバラにしてやる。内臓をぶちまけろ」

　こんな過激な言葉に胸が震えるなんて思ってもみなかった。もっと言ってほしい。もっと蔑んでほしい。そんな欲求が胸の奥から湧き上がってくる。告白したらどんな返事が返ってくるのだろうか。その時、心臓が握りつぶされるのか、それとも眼球がえぐり出されるのか。彼女の過激なセリフを想像する度に、とてつもない陶酔感に襲われる。その陶酔感の為、義一郎の意識は遠くなっていく。

　突然、義一郎のスマホに新着通知が届いた。自分が参加しているＳＮＳ、クラス専用のＳＮＳからの通知だった。

　義一郎はスマホの画面をタッチしメッセージを表示する。それは何と、自分が意識している女子生徒、黒田星子からのメッセージだった。

『私の胸を堪能したい人は集まってください。本日（土曜日）午後８時にミミ先生の自宅前集合です。マッハを扱える方のみ堪能できます。ブラを付けずに待ってます。ただし、お触りは禁止。———黒田星子（くろだせいこ）』

　この一文を読んだとき、義一郎の目の前に火花がはじけた。クラス一、いや、学園一と言われている豊乳を堪能できる。ＪＫのおっぱいに心を奪われるなんて情けないと思う。しかし、自分の切ない想いはそれを欲している。義一郎は疑いもせずこのメッセージに乗ることにした。マッハとは古いカワサキ製のオートバイだろう。幸い、自分は大型二輪免許を持っている。星子とタンデムするなら自分の背には星子の胸が押し付けられる。彼女の胸を堪能できるとはこの事だろう。

　そのメッセージに興奮してしまった義一郎は、その夜は一睡もできず、明け方までスマホを眺めていたという。