モノクローム

だいぶ風がぬるくなった 日曜の昼下がり

ふと おもむろに河川敷を歩きたくなった

桜のつぼみが チラホラ開いている

満開になる日も

そう遠くないだろう


目的もなくただ景色を眺め

同じ様に 雰囲気を楽しむ人と行き交う


聞き覚えのある笑い声

顔を持ち上げると 君がいた

ただその笑顔は 見知らぬ人に向けられて

無邪気な表情をうかべている


こちらに気づいて目が合った

一瞬こわばりながら すぐにまた笑顔を 隣に向けた


オレはきっと彫刻のように 表情を変えなかっただろう

それは最後に君と

言葉を交わした日を 思い出していたから


モノクロフィルムの様によみがえる

あの時の君は 泣き顔だった

喉の奥からやっと出た声は 「もうムリ」

それだけだった


ゆっくりとすれ違う君の指には

ま新しい指輪が光ってた


過ぎ去る姿を振り返らなかった

多分 君も同じだろう

もう過ぎた過去

今の君とあの時とは違う


けれど 心の中で呟いた

「君の幸せ 願ってる」

伝えたい訳でもない

ただ祝福させて欲しい


見上げた桜の木

もうすぐ薄紅色の花びらも

風にのって舞うだろう








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