ナーシサス


彼は今日も湖に行きました

人気のない湖で

何をしているかは誰にも言わず

ただ 取り憑かれたように 湖に行きました

聞こえてくるのは

誰かを讃え 愛を囁く言葉でした


そのうち

湖に向かったまま

彼は戻らなくなりました

心配になった人々は

様子を見に湖へ向かいました

けれど そこには誰もいません

彼の名を呼んでも返事はありません


かすかにゆらぐ湖一帯には

いつしか

無数の水仙が咲き誇っておりました

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