秋色
Len
あの頃の私
お盆も終わり、風が柔らかくすこし冷たく感じてきた。
なんとなく秋の始まりを感じ始めていた。
そんな雰囲気のせいか、部屋の片づけをしていながら昔のアルバムを開いていた。
そこには一枚の大事な写真がある。
ブラコンって言われるほど、2こ上の春斗兄さんと私と幼なじみのさくら。三人が無邪気な笑顔で、花火をしている写真だった。
そっか、夏はいつも三人ですごいしていたな。そんなことを思うと、あの夏を思い出した。
さくらは昔から家に遊びに来る幼なじみだった。男勝りと言われるわたしとちがって、女の子らしくってけど、いざとなると凛とした雰囲気のさくらは、憧れであり大好きな友達だった。
2個上の春斗兄さんは、スポーツも勉強もできて自慢の、いやそれ以上に兄弟じゃなければな・・・と思うほど思ってた人。
中学の夏休み、わたしからさくらにいった、さくらってずっと一途に春斗兄さん思ってるよね。
私はしっていた、さくらが兄さんに恋心抱いていることに。
さくらは少しほほを赤らめてうなづいた。うん、というとでも今のまま三人で遊んでるほうがいい。千香がお兄さん大好きなのしってるから。
そう答えた。
私は特別に思ってることをきづかれたはずかしさか、焦りか、少し強い口調で言った。
「なにいってるの?そんなんじゃない。だって、兄弟だし。兄さんもてるのに彼女つくらないのがきっと悪いんだ。さくらも大好きならいっちゃいなよ、さくらなら・・・私はいいから。」
あの時までしらなかった、兄さんがずっと彼女作らなかった理由。
夏の終わりのお盆祭り、いつもは三人で行くのに、適当に下手な嘘をついて家に残った。そして、二人で過ごす時間をつくった。
自分でそうしておきながら、二階のへやでふてくされてゲームをしていた。
ふと、玄関先で話し声がきこえて窓からそっと見てみた。
そこには、春斗兄さんとさくらがてをつないでいて、兄さんがさくらにキスをしていた。瞬間的に、窓下にかくれた。胸がばくばくいって、涙があふれた。どうして涙があふれるのかわからない、春斗兄さんをとられたから?悔しいから?わからなくてとにかく涙があふれた。
階段を上がってくる足音。
兄さんがドアごしから声をかけてきた。
今日は気を使ってくれてありがとう。さくらに告白したよ。付き合うことになった。
私は無造作に顔をふき、ドアにむかって話し返した。
「よかったね、なんだ。兄さんもさくら好きだったんだ、二人とも大好きだから・・・私・・・嬉しいよ。」
兄さんが心配そうに、泣いてるのかといってきた。
「うん、ちょっとね、うれし涙。二人が大好きだから。」
そうか、ありがとうというと、兄さんはドアからはなれていった。
そう、悔し涙じゃない、きっとうれし涙なんだ。そう思い聞かせようとした。だけど、余計にポロポロと涙があふれ、とまらなかった。
それからの二人は順調に付き合っていた。三人でどっかいこう、といわれても私は、適当な理由でことわった。
そのうち、さくらとは疎遠になってしまった。けれど、春斗兄さんが遊びに行き、写真をみせてくれるたび、そこにはすごく奇麗になったさくらが笑っていた。
ある年のお盆おわり、さくらをつれてきて春斗兄さんが両親に紹介しつつ、仕事の赴任先にさくらもつれていくと報告しに来た。
久々に会うさくらは、私に少し遠慮がちにしていた。
兄はすぐにじゃないけど、赴任先でおちついたら、きちんとした形でさくらと暮らすといった。それが結婚報告なのもわかった。
両親は小さいころからしってるさくらの人柄も分かるので喜んだ。
玄関先まで見送り、両親が家に入っても、私は二人の姿が消えるまでじっと見つめていた。
夕暮れの影が伸び、二人の手をつなぐ影もすっと伸びていた。
また、あの時みたいに不意に涙がでてきた。
報告に私は嬉しかったはず、これはうれし涙。けれどその場に座りこんで嗚咽が付くほど泣いた。
だって、仕方ないよ、兄さんは兄弟だもの。それにさくらならいいんだ。
複雑な感情を整理できず、ただただ泣いた。
秋の香りただよう夕暮れだった。
翌年のお盆には、夫婦になった兄さんとさくらがきていた。私はからかうように、さくら姉さんとよぶと、照れながらでも、嬉しそうに一緒に支度をした。
今年も二人の仲いい姿をみて、一人暮らしの部屋にもどっていた。
どのくらい幼い三人の写真に思い出をはせていただろう、ベランダの窓から優しい西日が差しこんでいた。
日暮れがだいぶ短くなった。
アルバムから写真をとりだし、今年二人からもらったおそろいの写真たてにいれて、そっとテーブルに置いた。
秋色の夕日をあの時のように窓から眺めた。
秋色 Len @norasino
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