この寒い冬の日に宝物を!
灼凪
第1話(完結)
ここ一週間、カズマが私に構ってくれない。いや、爆裂魔法を撃ちに行く散歩は付きあってくれるのだが。
腑に落ちない態度で、夜は素敵な喫茶店にも行かないし、ここの所最近夜更かしが激しいのだ。
「あの、カズマ、今日もですか?」
「ああ、今忙しいんだ。ごめん」
夕飯等を済ませた後素っ気なく、どこかそそっかしく自室に篭ってしまった。 もしかして…と少し期待している自分がいる。
12月4日。
「「めぐみーん!誕生日おめでとう!!」」
クラッカーの音が鳴り響く。期待はしていたが、私の想像以上の出来事で、良い意味で予想を裏切られた。
「ねぇめぐみん!早速プレゼントを渡したいんだけどいいかしら?私からはこれ!光る腕輪よ!これで夜道も安心して歩けるわね!」
そういうとアクアは女神特製腕輪を渡した。
「あの…その、めぐみん。私からはこれだ」
ダクネスからは中くらいの大きさの箱を渡された。
「まぁ、その…何だ。開けてみてくれ」言われるまま開けてみると、そこには可愛らしいストールが入っていた。
「二人とも、ありがとうございます!大切に使わせていただきます」
ダクネスがカズマをじっとみつめる。私も同じ視線を向けていた。
「…じゅ、16歳の誕生日おめでとうな。俺からは以上だ」
「何もないんですか?私の彼氏だというのに何も用意してないんですか!?」
「ケーキはカズマが作ったから、さぞかし美味しいでしょうね!先に食べちゃおうかしら」
空気の読めないアクアを尻目に私とカズマはわざわざテーブルの下に隠れた。
「いででで!俺はここじゃ渡せないものなんだよ!」
こめかみをグリグリしてる動きをとめた。
「渡せないものってなんですか?いいですよ、後で部屋に行きます」
そう耳打ちした。
パーティーが終わってお風呂も入った後、カズマの部屋をノックした。
コンコンと、深呼吸をする。今更緊張する理由もないが、少しだけしていた。
「入りますよ」
「どうぞー」
そこには、両手を背中の後ろに隠したカズマが立っていた。
どるるるるるる…
思わず緊張のあまりに口ドラムを口ずさむ。
「その口ドラムやめろ。やめなきゃあげないからな」
「はい、分かりましたよ」
「めぐみん。改めて誕生日おめでとう!あの、その…コレが俺からのプレゼントだ!」
そういうと、リボンのついた赤いマフラーを差し出してきて、私はそれを受け取るとリボンを解きながら首にかけた。
「〜!あ、ありがとうございます!凄く嬉しいです!」
マフラーの境目や縫い目をよくみて確認すると、手作りという感じが伝わってくる。仕返しとばかりに私はカズマを抱きしめた。
「ちょお!?めぐみん!?」
「何かよからぬことを考えてるんじゃないかと思ってたので安心しました」
「別に考えてねーよ!」
「カズマのことだから、私に初めてを奪われてくれなんて爆弾発言を言うんじゃないかと…」
「めぐみん!だからそーいうことをだな!お前が爆弾発言してんじゃねぇーか!」
カズマが思っているであろうことをもう一言口にしてみる。
「ひょっとしてダクネスと被ったなーとか、思ったりしていませんか?」
こくこくと首だけ縦にふってカズマは頷く。
「私は嫌だとか思っていませんよ。それに少し被っただけで…む?」
不意打ちでキュンとさせるの、やめてくれない?というカズマの顔に対して私はそれは無理な質問ですみたいな顔をすると、カズマから一旦離れ、ある事に気づいた。
「このマフラー、ちょっと長いですね?」
「ふっふっふwよくぞ気づいてくれました。察しが良い紅魔族なら分かるだろ?」
カズマの首を絞めるためのものではなく、少し長めのマフラーで、恋人マフラー!? 冬の日は、ちょっと長めのマフラーで、彼と一緒に爆裂散歩…。
自然にカズマのことをマフラーを巻くためにベッドに押し倒していた。
「確かにコレは皆の前で渡せないものでしたね。んっ」
そう言うと巻いてキスをした。
「カズマカズマ!今夜はコレをつけて寝ましょう!?」
「このままつけたら首が絞まるっていうか、寝返りもうてそうにないんだけど」
ちょっと照れ臭そうにカズマは言う。
あ、それもそうですよね、としゅんとして私は言うと、外して枕元にマフラーを置いた。
私はカズマに腕枕をされて眠りについた。
次の日。
「カズマー!早速デートに行きましょうか?」
「なんだよ。まだ朝早いのに、俺はもうちょっと寝てたい気分なんだよ」
カズマをからかって叩き起こし、家から少し離れた所でマフラーを巻いた。
やっぱりカズマは最高なのです!
この寒い冬の日に宝物を! 灼凪 @hitujiusagi
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