第7話 エピローグ

 ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥー……ン


 今夏も暑かった。こうなることは知っていた。


 ガガガガガガガガガガガガガガガ


 室外機がうるさい。だが、そのうるささをただ単に甘受していた先月までの自分とは違うのだった。今の自分は、この室外機がどれくらいの割合でうるさくなるのか知っている。26/35だ。3/4より少し少ないくらい。


 ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥー……ン


 ……え?

 「3/4より少し少ないくらい」? それって、ほとんどじゃないか。

 今になってようやく実感が湧いてきた。それは、いったんただの数学の問題になった室外機問題が、再び現実の問題に戻ってきたからだ。

 どれだけ続くとも知れない拷問よりは、どれだけ続くか知れている拷問のほうが、まだ希望が持てる。そう思っていた。

 だが、地獄がどれだけ続くか知れたところで、うるささはうるささとしてただそこにあった。それは厳然たる事実であり、結局のところ、気が休まることなどないのだった。


 よし。


 引っ越そう。


(了)

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未園空数学事務所 鯵坂もっちょ @motcho

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