第5話 み

 結局、夜中の二時まで眠れず、疲労はなお重い。シャワーのときに見る己のつらが、妙な具合になっている。

 ええと、今日は、どの文字だ。まあいいや。

 よし、気が溢れる。筆を執る。



 どうしてもそれらについての好奇を捨てられず、遂に俺は葉をそっとめくる。俺の内なる蟷螂とうろうが、それらに手を付けるというわけだ。

 人のさがなのだろう、知りはしていても、ついその行いをしてしまう。

 そういうとき、人は、己を救おうとし、言葉を用い、己の間違っていないことを説く。

 違う。そのようなつもりは無い。ありふれているその言葉を、幾度吐くのだろう。数字にしようとするだけ、無駄なのだ。なにせ、生きている間、それをし続けることになるのだ。

 蟷螂に叱責を加え、止めることが出来ればよい。さもなくば、その暗い夜にずぶずぶとのめり込むこととなり、決して脱け出すことは許されない。ゆえに、気付くことのない振りをする。気付くことのない振りをし、通り過ぎるのだ。だが、もう既に、俺の蟷螂は、それらに対してその手を伸ばしてしまっている。

 ぎざぎざとしたそれで触れれば、たちどころに傷付けてしまうと知りながら。



 ああ、ここまでだ。

 何故だろう。とても、苦しい。己の証明として行うはずのこの試みが、とても苦しい。このようなはずでは。

 ああ、そうだ。これを無くす唯一の方法を、俺は知ってる。

 続きを。

 続けて、続けて、終えてしまうことだ。やり切れば、何ほどのこともない。

 よし、それしかない。

 さあ、早く続きをくれ。

 とりあえず、やはり、今日も優れない。

 眠る。

 やっぱり昨日の記録の文字は、読めない。一応、今日も記録しておく。明日は、「せ」だ。

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