第4話 た

 この試みも、もう四日よにち目。意外と苦労するな。用いることの出来ない文字を、前もって記録しておくことに。

 だけど、ゆうべは調子が悪いのが見えていて、記録した文字を、読むことが出来ない。これはどういう文字なのだろう。

 まあ、いい。気が満ちて、筆を執る。

 あれ、また決め台詞が?



 手を。手を伸ばすことで、手を伸ばしているという事実を消す。どうやら俺のすることは、そういうやり口であるようだ。おおっぴらに手を伸ばすことで、己が実際、手を伸ばしているものを暗くする。

 ゆえに、羽を休めるそれらを探すことはなく、その実、横目で葉の裏などにそれらがひっそりと居るのでは、ということを望むのだ。それをするのに、夜という時は、うってつけであろう。もともと、暗いのだ。人の目に晒されることを嫌うそれらの夜の姿を見ようとする俺のことも、上手く秘匿してくれる。

 間違えてはいけない。そこに、のうのうと座していてはいけない。くれぐれも、ひっそりと、その動作あるべきである。

 ああ、今、ひとつ見ることが。だが、それに気付くことはない。気づいてはならぬのだ。

それがゆえ、どのような姿でそれらが休んでいるのだろうという好奇の心が、首を。そう、ちょうど、それを狙う蟷螂とうろうのように。



 なかなか、心が減るな。

 飯も、風呂も、億劫だ。今日は、もういいや。

 明日あすは、「み」でいこう。

 眠い。あと、なにやら落ち着き所がない。

 脚がむず痒い。

 嫌だな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る