第9話 開会式とバケツリレー

 開会式にはどうにか間に合った。

 首都ポセイディアのコロッセオ(闘技場)。

 今回一種目しかないとはいえ、セレモニーは盛大にやるようだった。

 今は、選手たちは入場を終えて、アトランティス人の出し物を眺めている。

 聖火リレーじゃなくて、バケツリレーが始まった時は何なんだと思ったが。

 文化の違いで済ましていいのかコレ……。


 さて……と、大和は、頭を切り替えた。

 問題は選手たちだ。ここに居るのは、俺たち五大陸代表、アトランティス大陸代表、各準大陸人代表のみだ。

 人数で言うならそれぞれ四人、一人、たくさん。

 ただ、太陽の森でシドニーがバーベキュー(暗喩)をしたため、準大陸人の数はこれでもだいぶ減ったはず。

 ……かと思ったら六大陸代表の五人を抜いても、まだ準大陸人は三百人はいた。すごい(小並感)


 大和が会場を見回した限り、アトランティス人の身体的外見は普通の人間と変わらないようだった。唯一、外見で見分ける方法があるとすれば、服、だろう。

 ……問題は、選手たちの間にそれっぽい格好をした者が一人としていないことだ。

 まぁ正体を自分からバラす馬鹿はいない。

 アトランティス人は準大陸選手達の服をぶんどり中に紛れている可能性がある。

 大和は頭を掻いた。

(アトランティス大陸は一つしかない。つまり、今ここに居る選手たちの中で、アトランティス代表は一人だけ。……なら、容易くしっぽを掴ませてくれるわけがないか。なら、競技中にボロを出すまで待つ――)


 ちなみに、競技は一種目だが、五種目ある。何を言っているのかよくわからねーと(ry

 ……現代オリンピックに《近代五種競技》という競技がある。

 一人で射撃・フェンシング・水泳・馬術・ランニングの五競技をこなし、順位を決める複合競技である。それを、ゴールの山頂の神殿まで競争しながらこなすので、ルールは本家とは異なり、むしろテトラアスロンに近いだろう。

 更に、今回は魔リンピック競技なので、各競技を魔術を使ってこなさねばならない。


 大和はここがアトランティス人特定の突破口だと考えていた。

 アトランティスの魔術は、九世紀も前に大陸ごと沈められた。そのせいで、それ以来大和たちの知っている魔術とは異なる魔術体系を組み上げてきたはず――。

 各選手の魔術を見れば、異質な魔術は特定できるだろう。

 あとは、準大陸人三百人の乱戦の中で、それを見逃さないこと。

(なかなか難題だが、上等だ。このメンバーならできる)

 まぁ最悪、アメリアが居るのならなんとかなるだろーーと大和は考えていた、

 何しろ《死神》と名高いお方である。

 恩人に対する敬愛の念もあるかもしれないが、そうじゃなくても準大陸人程度なら相手にもならないはずだ。

 じゃなかったら、各国の魔術的紛争を仲裁する、国連超常現象局のエースを張れるわけがない。

 ……もし、この人が居なくなったら、とふと考えて大和は首を振った。

 そんなこと、あるわけがなかった。

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