第5話 犯行声明(翻案:アメリア)
アメリアが翻案した犯行声明を説明しながら読み上げる。
ぶっちゃけると、その内容は酷いの一言に尽きた。
「さて、ぶっとんだ声明だけど、分かったかしら~?」
小首を傾げるアメリアに対し、全員めいめいに頭を抱えて唸っていた。
アメリアの説明で理解はできたが、納得が出来ない! それぐらいイカレタ犯行声明だった。
大和がこめかみを揉みながら、なんとか思考の整理を試みる。
「姐さん、つまり……、魔法使いが暮らしていたアトランティス大陸ってのが十二世紀に実在してたけど――俺らのご先祖様が第二次魔女狩り戦争で大陸ごと沈めて封印しちゃったってことですか……?」
「魔法使いたち――つまりアトランティス人は海中で結界張って生き延びてはったけど、数世紀経って封印が劣化したせいで、金魚みたいに大陸ごとぷっかり浮かべるようになったと……」
「それで、再浮上して、なぜかオリンピックにかこつけて生存のためのバトルロワイヤルしようって魂胆だとおっしゃるんですか……アメリアさん?」
戸惑うメンバーが口々に尋ねる。冗談だろ? とありありと表情から伺えた。
にっこりとアメリアが笑う。
「理解の早い班員達で助かるわ~」
本気だった。誰もドッキリだと言ってくれなかった。
つまり、アメリアが告げたアトランティス人達の犯行声明も全て裏が取れたらしい。
犯行声明曰く―――
・君たちの先祖が海中に我らを封じたせいで、我らそうとう激おこだよ! でも封印が経年劣化したせいで、浮上できたよ! やったねこのやろう!
・だが、我らが封印されている間に、君たちのご先祖が古代ギリシャ由来の儀式であるオリンピックを復活させ、神に五大陸の繁栄を願い続けたせいで『世界には五大陸しかない』と呪がかかってしまった。つまり、海上に存在できるのは五大陸のみ!
・でも今の世界だと、浮上した我らのアトランティス大陸含めて六大陸じゃん!
・なにこれ、狙ったの?! お前らの先祖、どんだけ我ら嫌いなの?! 鬼畜すぎない? ねぇ、ちょっと!?
・くそう、こうなったらしょうがねぇ! バトルロワイヤルだ。六大陸の内、一大陸はアトランティスの代わりに沈んでもらおう。まぁ、別に我ら以外全部沈んでもいいんだけどな! 我らは負けないもんね! せいぜい、五大陸同士で足引っ張り合いな! ばーかばーか! どうせ、元はといえば、お前らの先祖がわるいんだからな! だから、恨むとしたら先祖を恨みな! ばーかばーか、お前の先祖でーべそー!
……これは酷い。
全員絶句した後、深呼吸して……暴発した。
「ちょいマテや、スタッフ! 翻訳しすぎやろ! 無理やりなんか微笑ましいガキ大将にアレンジしてんじゃねぇぞ! 誰得やねん!」
「突っ込みどころはそこでいいのかしら~」
いいわけがない。つい吠えたシドニーだったが相当混乱しているらしい。
「アトランティス……UFOの目撃……バミューダトライアングル……うっ頭が……」
「戻って来なさいUFO馬鹿!」
電波を受信し出した大和も、混乱して力加減せずに大和のみぞおちに膝を叩き込んだルーも相当やばかった。
「それで~、あなた達を呼んだのは『五大陸全てを存続させたまま、魔法オリンピックに勝つ』って作戦に協力して欲しかったんだけど~」
さらに、部下がヤバイってのにマイペースに話を進めるアメリア。もうシッチャカメッチャカである。
場はカオスに沈んだ……。
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