第23話 アイスキャンディー
「皆さん、ようこそアイスクィーンキャッスルへ。私は女王様より皆様のご案内を仰せつかっているサファイアと申します」
サファイアと名乗った女性は、その名の通り宝石を思わせる美しい青の瞳をもち。
その肌は青白く透き通っていた。
ここには女王と、それに使える精霊が住んでいると聞いている。
恐らく彼女が精霊なのだろう。
「キャンディーさん、お久しぶりですー」
「レルちゃん知り合いなの?ん?でも名前違うんじゃ?」
「キャンディーさんはー、私が付けたー渾名ですー」
「へー。仲いいんだね」
うん、絶対違うと思うぞ。
サファイアさん物凄く嫌そうな顔してるし。
顔を引きつらせるサファイアを見て、レルが絶対以前何かやらかしたんだと確信する。
「俺は彩堂たかしっていいます。暫くご厄介になると思うんで、よろしくお願いします」
「主より仰せつかっております。御入用の際などは気軽にお声をおかけください。それでは皆さんを女王様の元迄ご案内いたしますので、此方へどうぞ」
そう笑顔で言うと、彼女は俺達を先導してくれる。
サファイアの後ろに続き、歩きながら城内を見渡し感嘆する。
城内は光輝く宝玉の中に入り込んだような輝きに包まれていた。
壁も柱も、脇に置かれている調度品の類すらも全てが光を乱反射させ輝いており、その幻想的な美しさには目を見張る。
真っ白な外観もそうとう美しかったが、城中はそれ以上だ。
「すっごく綺麗なお城よねぇ」
すぐ横を歩く坂神がうっとりした表情で呟く。
「ねぇ、たかし。将来私達もこんなお城に住みましょ」
「一人で勝手に住んでろ」
「もう、つれないんだから。でもそういう所も大好きよ」
俺はお前のそういう所が大っ嫌いだけどな。
すり寄って腕を絡めてくる坂神を振りほどき距離をとる。
全く油断のならない奴だ。
「わ、わたしは。住むならもっとこう暖かい感じの家が良いです。あ!勿論このお城も素晴らしいとは思いますけど!」
「そうだな。この城が悪いとは言わないが、流石にこうド派手だと落ち着かない。やっぱり住むならもっとこじんまりとした温かみのある家が良いよな」
「そうよね!素敵なお城だと思うけど、やっぱり愛の巣は暖かい感じが良いわよね!」
プリンとのやり取りに180度意見を翻した坂神が割り込んでくるが、無視して話題を変える。
「そういやプリン、仕事の方は大丈夫なのか?ひょっとしたら結構な期間此処に留まる事になるかもしれないけど?」
「大丈夫です!仕事の方は私の抜けた穴をパフェちゃんが頑張ってくれてるので、1月でも2月でもお供出来ます!」
「あら、たったそれだけなのね?たかしの為だったら、私なら10年でも20年でも付き合うわ!ううん、死ぬまでだって構わない!」
だったら即死魔法で始末したらさっさと帰ってくれるかな?
いやだめか。
こいつはその程度で引き下がるたまじゃない。
それに訓練には坂神の協力が必要不可欠だ。
気配察知用の訓練は目隠しをしての組手形式だ。
坂神が帰ると自動的に相手がレルになってしまう。
あの馬鹿は組手の際、手加減なしの全力で遠慮なくぶん殴ってきやがるからきっついのだ。
不本意ではあるが、そういった理由から坂神に帰られては困る。
が、甘やかす気もないのでスルーする。
「パフェってプレゼントを渡したって言う姪っ子の?」
「はい!新米とは思えない位凄く優秀なんですよ!」
「へぇ~、そうなのか」
「たかしさんにも今度ご紹介しますね」
「ちょっと!無視しないでよ!!」
並んで歩くプリンとの間に割り込み、坂神が喚く。
無視を決め込んでいたが、流石に耳元で怒鳴られたのでは堪らない。
「大声出すなよ。周りに迷惑だろ?」
「何よ!たかしが無視するから悪いんでしょ!第一周りには誰もいないじゃない!!」
言われて気づく。
かなり大きな城にもかかわらず、ここに至るまでサイファイアさんとしか顔を合わせていない。
気配自体はある。
微かだが。
だが何だろう、この感じ。
言われて気づくまで気にも止めなかったが、ひょっとして……
「ひょっとして俺達避けられてる?」
「何よ?今更気づいたの?たかしもまだまだね」
どうやら坂神は気づいていたようだ。
自慢げな坂神の顔を見てると、何だか負けたような気がして少し腹が立つ。
「氷の精霊は恥ずかしがりやが多いもので……」
俺達の会話が耳に入ったのか、此方を振り向き笑顔でサファイアさんが俺の疑問に答えてくれる。
だがどうも様子が変だ?。
歯切れも悪いし、心なしか顔もひきつっている。
「氷の精霊さん達はー恥ずかしがりやでー、シロップをかけるとー、とってもー美味しいんですー」
恥ずかしがりやから美味しいに繋がる因果関係が全く理解できないが、理解する。
こいつが全ての元凶だと。
キャンディーさんの渾名の意味を理解した。
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