第11話 勝利!

此方へと突っ込んでくるオーガ。

その数5体。

その中で突出して前に出ていたオーガに即死魔法を浴びせる。


即死魔法を受けたオーガは断末魔の声を上げる事すら出来ずに、その場に崩れ落ち。俺は素早くその死体に駆け寄り軽く蹴り飛ばす。

後続の敵めがけて。


飛んできた仲間の死体に気を取られ、オーガたちが足を止めた所で範囲化した即死魔法を放つ。

複数纏めての即死は精度がかなり落ちるが、それでもオーガ相手なら十分だ。

その証拠に、魔法を受けた4体はほぼ同時に崩れ落ちる。


「おみごとですー」

「まあ、流石にオーガ程度なら楽勝だ。悪いけど魔石と牙の回収は頼んだ」

「任せてーくださいー。ヘタレさんのー、代わりにー。わたしがー、汚れ仕事をしますねー」


そういう言い方をされると、俺が他人に嫌な仕事を押し付ける最低野郎に聞こえるんだが。まあ一々レルのいう事を気にしてたら切りが無いか。

少しもやっとするが、気にしないようにしてその場を離れる。

近くに居て万一目に入ったら大変だからだ。


俺達は今、パーナスの北にある渓谷にてオーガ討伐のクエストを行っている。


昨日坂神との食事の後、ぐいぐい迫ってくる奴を退け。

俺は何とか貞操を守り切る。

元々心は女で、俺が好きだったなどと言われても、元を知っている俺には奴を受け止める事などできそうにない。

悪いけどあいつには俺を諦めて、この世界で誰か良い人が見つかる事を祈るばかりだ。


もう二度と合う事も無いが、頑張れよ坂神!

俺は親友として、草葉の陰から応援してるぜ!


「終わりましたー。牙をー引っこ抜いたりー、心臓の辺りをー抉るのってー、楽しいですねー」

「そ、そうか?それは良かったよ」


嫌々されるのもあれだが、グロイ行為を楽しいと報告されるのも正直あれな気がする。まあ、嫌々よりましか。


「じゃあ、もうクエスト分は集まったし帰るか」

「えー、折角のーデートなのにー」


うん、いや。デートじゃないからね。

魔物を始末して解体するデートとか聞いた事ないから。


「もう少しーデートをー、続けましょうよー」


そう言いながらレルは何故か逆立ちをする。

もはやそれがどういう感情の発露なのかすら理解できない。

相変わらず理解不能な奴だ。


まあデート云々は兎も角、魔石とオーガの牙はクエスト無しでも普通に金になる。

レルがいるうちに出来るだけ稼いだ方がいいのではないか?

そんな考えが頭を過る。



レルは今朝起きて宿屋から出ると、すぐ傍の道端でしゃがみ込んで蟻を一匹一匹楽しそうに指で潰して遊んでいた。


「お前何してんの?虫好きだったんじゃないのか?」


そう聞くと。


「働きアリさんはー働くだけでー、楽しい事がー何もないからー。楽にしてあげてるんですー」


楽しそうに話すタヌキを思わず蹴り飛ばしてしまったが。

多分俺は悪くないはず。


文句を言ってくるタヌキの苦情を軽くスルーし。

何故ここに居るのか話を聞いてみると、社会見学の一環として俺の仕事を手伝うよう、エニルに命じられて俺を待っていたそうだ。


昨日は心の中で死ねと思っていたが。

流石は長き歳月をその身に刻む魔女。

俺の窮状をちゃんと理解していてくれたらしい。


というわけで、余命を確保すべく速攻でレルとそこそこ金になるクエストへとやってきているわけだ。



「よし!デート金稼ぎ続けるか!」

「やったー」


気づいたら何故かブリッジをしていたレルが、俺の返事を聞いて嬉しそうに飛び上がり、やったーと叫びながら跳ね回る。

俺はそんな無邪気なレルの姿に、つい見惚れてしまう。


レルは昨日のワンピースと違い、今日は汚れてもいいように上下ベージュの作業着姿だ。そんな格好で馬鹿みたいに飛び跳ねる姿ですら、人間バージョンだと可憐にみえてしまうから困る。


「で?どっちに行けばいいんだ?」

「えーとですねー。東にー1キロ程のー場所にー、10匹ぐらいー固まってますー」


レルの索敵範囲は驚くほど広い。

俺も周囲100メートル位までなら生命反応を感知できたりするが、レルのそれは俺の10倍以上だ。


「それじゃあー、競争ーですよー」


なんでだよ!と思いつつも、合意も待たずに走り出したレルの後を追う。



~result~最終結果


途中で大きな石を奴の後頭部に全力でぶつけ。

吹っ飛んだ隙に相手を捲って見事に俺の逆転勝利!


たかしwin!

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