第5話




「秘密結社SSM、って知ってる?」



 ダイニングで、3人でミレの作ってくれたオムライスとサラダを囲み、会話をしていると、ユウと名乗った例の男が聞きなれないワードを出してきた。

「SSM? それはまたなんの精神病の名前なの?」

「いやこれは違うよリアちゃん? これは、Secret Society Murderersの略。日本語で言うと、『秘密結社・秘密結社殺し』だね」

「ややこしい」

「秘密結社を探し出しては、メンバーを片っ端から殺していく……そんな恐ろしい結社があるんだって」

 オムライスをもぐもぐとやりながら、ミレが声をあげた。

「え、それやばくね? マジ困るわ」

「そうだよねー」

 僕ら多重人格者は、基本的に自分しか愛せないからねぇ。

 そう言うとユウはナイフとフォークを手に取り、付け合わせのブロッコリーと人参を器用に切り始めた。

「チームワークとかネットワークとか、壊滅的にないから。我らが頼みの綱、天下の会長様がやられないことを祈るばかりだよ」

「いや、まず自分の心配しろよ、ユウ。おめー、この世で一番恨みを買ってるに等しい職業してんだからよ」

「僕? 僕は返り討ちにするから大丈夫でーす」

 ひらひらとナイフを振るユウに、私は尋ねる。

「何もしてないのに殺すの? その人たちは」

「ん? まあ、たぶんね。でも過去に秘密結社に何かされて、それで逆恨みしてるってこともあるのかも。あるいはそんな恨みなんてなくて、社会不適合者に秘密結社があるという時点で気に食わないから、殺してるだけなのかもしれないけど……だからとにかく、変な人に会ったら気をつけるんだよ?」

 すると突然、ユウはミレにナイフを向けた。

「それとミレ、僕は何もあの病院にいた全員を殺してはいないぞ! ちゃんと人気の無いところで、リアちゃんのご両親だけ殺りました!」

「え、じゃ本物の医者は?」

「眠らせただけですー! 無事ですー!」

 もー、すぐ話に尾びれがつきまくるんだからこの秘密結社はー、とユウはスプーンに持ち替えてオムライスをがっつく。

「あー、やっぱりおいしー、ミレの作ったご飯!」

「……」

 それを聞いて、なんとなく私も、オムライスを口に運ぶ。確かに、今まで食べたどのオムライスより、ずっと美味しかった。



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