第6話



「やあやあ名無しくん、今日もまた、暇そうだねぇ!」


 ロビーで大昔の新聞記事を読んでいた俺は、帰ってきたユウにナイフを投げられて驚いてかわす。

「ちょ、やめっ……バカかお前は!?」

「バカは君だろ。こんなにたくさん部屋のあるところで、ロビー暮らしなんて」

「俺の部屋はないんだ。ほっとけ」

「何読んでんの?」

 新聞記事を覗き込まれ、慌てて隠した。

「関係ないだろ」

「冷たい事言うなよ。同じ体を共有してるよしみだろ?」

「俺は一度も使わせてもらってない」

「そりゃ、失礼」

 ユウがどっかと隣に座ってきたので、めいいっぱい間を空けた。

「ねえ、名無しくん」

「なに」

「君はいつまで、引きこもってるつもりなのかな」

「別にいいだろ。誰も困ってないんだ」

 新聞記事をポケットにしまうと、ユウはただ少し寂しそうに、「……そう」と言って、消えた。

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